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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


君に vol.20






   「  テ ィ ー ダ ?  」




扉の向こうに見えたのは……






僅かな松明の明かりを、柔らかく弾く金の髪。

ピクリとも動かないその姿に。

私の足は、歩みを止める。

まわりには、ワッカさんもルールーもリュックもキマリもいたはずなのに。

私の目には、もう、その人しか映らない。


―― 映さない ――


とても、とても暗かったけど。

何故だか、そこだけ光って見える。

いつの間にか、音も消えた。

自分の心臓の音だけが、聞こえる。

トクン トクン

そして、次第に大きくなっていく。

ドクン ドクン

うるさいくらいに、どんどん大きくなっていく。

お願い、静まって! 私の鼓動。

キミの声が、聞こえなくなってしまうから。



生きて、るよね?

ちゃんと、息してる、よね?

だって、そこにいるんだもん。

やっと、帰ってきてくれたんだよね?



動いて! 私の足!


一歩、 また、 一歩。

キミに、 近づく。



「!」



今、ちょっとだけ…

動いた!

動いたよね?

風なんかじゃない。

キラッて、 髪、 微かに揺れた。

ほらっ!

さっきまで俯いてて見えなかった顔が少し覗いてる。



どうしたんだろ、 私の足。

まるで重い鉛の靴でも履いてるみたい…。

あと、ほんの少し歩けば、キミに手が届くのに。



あれ?

変だよ?

なんだか、霞んでる……

だんだん目の前がぼやけてくる、よ。

いやだ、ちゃんと見ていたい。

もう、見失うのは嫌だよ。


涙?


熱い雫が、私の頬を伝って落ちてく。

やだなぁ

私の涙腺、壊れちゃったみたいだよ?

だって、次から次に湧きあがってくる。

私、自分じゃきっと止められないよ。

キミが、止めてくれなくちゃ。



止めてくれるんだよね?

大丈夫、だよね?

もう少し。

もう少し、なんだよ。





「  !  」




気配に身じろぐように、ゆっくりと頭が上がる。

そっと重たそうな瞼が開き、懐かしい空の瞳が向けられた。

怪訝そうな顔をして、少し青ざめた唇が小さく動く。



「 ユ ウ ナ ? 」



ユウナの瞳は、澄んだ泉となり、止めどなく透明な雫があふれ落ちる。

ティーダの片手が静かにあがる。

真っ直ぐに、ユウナの方に…



その一言で、その仕草だけで

あんなに重たかった足取りが一気に羽のように軽くなる。

二人の間の数歩の距離を、疾風かぜになって駆け寄るユウナ。

その手を一瞬でも早く繋ぎ止めようとするかのように。



二人の指先が、触れる。



お互いの存在を確かめるように、そっと。

はやる気持ちを、懸命に抑えて…

ユウナはティーダの手を取り、そのまま傍らに座り込んでしまう。

その間、二人、ただひたすら見つめあう。


何度も何度も夢に、見た。

会いたさに苦しくて堪らなかった。

辛くて挫けそうになっても、この時のためにがんばってこれた。



やっと現実に戻ってきたかのように、瞳を細めて。

力の入らない手に心を込めて、ティーダがユウナの震える手を握り返す。



「会いたかった…ユウナ」



先ほどから零し続けているユウナの新たな涙のカーテンが、今度こそ恋しい人の姿を覆って見えなくさせてしまう。

けれど、すぐに強く抱きしめられて、ティーダの胸がその涙を吸い取ってくれる。

ユウナはやっとの思いで、言葉を紡ぐ。

ティーダの胸の中。


「……お帰り…なさい…ティーダ…」


ピクッと、ユウナの柔らかい髪をまとわせたティーダの手が止まる。


「うん…。 ただいま。 ユウナ」


そして、ティーダの腕の中、その胸を濡らし続けるユウナの栗色の髪に唇を寄せる。





小さな、けれど、力強いささやき。




―― もう、 絶対、 離さない ――








--- next to vol.21 ---



○あとがき○

お待たせしました。
最大のクライマックス・ついにティーダとユウナの再会です。
このシーンに向けて今まで書いてきたようなもんですから、今回は思いっきり凝ってみました。
この19と20、一話ずつは短いですけど、二人の心模様を充分に表したかったんです〜。
内容は……読んで頂けたら、充分にお分かりだと思います。
皆様の期待を裏切ってなければいいのですが……。(不安)

残すところ、あと2話。
最大の山場は越えたものの、書き足りてない部分をまだ少しお伝えしたいと思います。
その後の二人の様子やエボンの抗争の結末、スピラの今後などなど。作者の筆力で、どこまで書けるかが問題なのですが……(苦悶)


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