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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


君に vol.19






―― それは現実の時間にすれば、ほんの数分のことだったろう ――

―― だけど、オレには永遠にも思える時間、だった ――

―― オレは、夢、を見ていたんだ ――







ユウナがいたんだ。

笑ってた、ユウナ。

一所懸命、笑ってた。

そう、あれはルカだった。


   『はっはっはっはっは』
   『はっはっはっはっは』
    プッ! クスッ!
    あはっ、はははは・・・・
    ふふ、ふふふふふ・・・


オレがアーロンのことで不貞腐れてたら、笑わなきゃダメだって。
召喚士とガードはいつも笑ってなきゃって。
笑いながら旅したいんだって、言ってた。

そんで、笑う練習してたら二人ともほんっとに可笑しくなっちゃってさ。

笑ってた、ユウナ。

でも、今なら分かる。
何故笑っていたかったのか。
無理矢理にでも、笑おうとしてたのか。




初めて会った時。

君はとても疲れた顔をしてた。


   『出来ました! 私、召喚士になれました!』


ふらふらで今にも倒れてしまいそうだった。

実際、よろけそうになったんだよな。

でも、瞳は。

キラキラと輝いてた、ユウナ。

だけど、その輝きに隠れた覚悟。
全身全霊をかけたその覚悟があったから。

あんなに輝いてたんだ、よな。




マカラーニャの泉で。

君は初めて、泣いた。

二人でザナルカンド行こうって。

眠らない街で、一緒に朝陽を見ようって。

叶わない夢だってわかってたけど。

それでも約束すれば、いつか実現できそうな気がして。


   『できないよ…』


君は我慢できなくなって、泣いた。

綺麗だった、ユウナ。

だから、オレ……

きっと、本当に行きたかったんだ。
夢の中のザナルカンド。
夢だってわかってても。

夢、だからこそ。




ガガゼトでザナルカンド遺跡を一緒に眺めた時の。

ただ、一心に見つめていた。

忘れられない、君の姿。

心の内のすべてを浮かべたような、儚げなそのかんばせ

不安、悲しみ、諦め、覚悟、決意。

そして、ほんの少しの、希望。





オレ、最後のユウナ見てないんだ。

あの時はもうあれ以上、オレの泣き顔見られたくなくて。

ユウナの顔も見る勇気なくて。

オレの決心が揺らぎそうだったから。


どんな顔してた?

…いや、いいんだ。

あの言葉がすべて、言ってた。


   『ありがとう』


オレ、ユウナに辛い思いさせた。

でも、あの時はああするしかなかった。


今までのユウナ、オレ本当はもう見たくない。

どんなに綺麗だって、キラキラしてたって、たとえ笑ってたとしても。

いつも瞳の奥に悲しみが住んでた。

もしも、また会えたなら。

いや、絶対会って。

今度会ったら、ユウナ、もう寂しい色はしてないよな。

オヤジやおっさんはいないけどさ。

オレ、いればいいだろ?

すぐに、行くから…

これからは、心の底から笑ってるユウナを。

見たいんだ、オレ。





ユウナ

会いたいよ

ユウナ

返事、してくれよ

オレ、ここにいるよ

スピラに戻ってきたんだ

…ちゃんと…

ユウナ

君に、会うために





「・・・・・」



え?


今?


……何か聞こえた気が……した……


懐かしい、とても慕わしい、旋律

聞きたくて堪らなかった…

ユウナ の  <声>






浮遊していたオレの意識がゆっくりと重みを増していく。

夢の合間を漂っていた想いが、現実に引き戻されていく。


そして。


ずっと、ずっと探して待ち望んでいた…

聞きたかった、言葉が。

恋がれた人の声が。

夢なんかじゃない、現実の想いが…



  ― オレの耳に届けられる ―






   「  テ ィ ー ダ ?  」








--- next to vol.20 ---



○あとがき○

ここでは、多くは語りません。
今作と次作はペア作品となっております。
どーしても雰囲気を大事にしたかったのでこういう形になりました。
この「君に」において、最初で最後の最大のクライマックス(?!)です。
では、続きをどうぞ!


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