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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


君に vol.18




「時間ないから説明は後っ!」

リュックは叫ぶと同時にガードたちにアイテムをポイポイッと投げ渡した。

「他のみんなはこれ投げて! んで、ユウナはアレイズ!」

「はいっ!」 「おしっ!」 「わかったわ!」 「わかった」

「反則技だけど、一斉にいくよっ! 先手必勝! 一撃必殺! 同時攻撃! いいねっ!」

一瞬にしてリュックの意図を了解し、ザッと一列に並ぶ百戦錬磨のツワモノたち。

「来たっ!」

おそらく二度目はない。 チャンスは一度きり!

「いっけーっ!!!」

「そおらっ!」
「はいっ!」 「ふんっ!」

ワッカの強力な遠投を皮切りに、次々に投げられるフェニックスの尾!

「アレイズ!」

そして、日夜修行に励んできたユウナの強力な白魔法・アレイズ!

攻撃に入る寸前の隙をつき、それらが次々とエフレイエにヒットした。


 ― 刹那 ―


大地ごと揺るがす怒号がこだまする…。


ギャァァウゥゥゥーーーー―――――――――−−−……‥


動きは硬直したものの、飛来した勢いのまま、ベベル寺院へ衝突しようとした直後!


エフレイエは、霧散した………


数限りない幻光虫となって………


たった今、戦った者たちを幻光虫の波で覆い尽くさんとばかりに………


   ヒゥゥウゥゥゥゥゥーーーー――――


物悲しい悲鳴のような幻光虫の音色。

三度蘇りしも、またも戦いの道具とされたエフレイエの悲哀の慟哭なのか…。

『ごめんね。今は送ってあげられない。終わったら。必ず…!』

皆が七色のヒカリの洪水を避けて退く中、ユウナはただ一人立ち尽くし、幻光虫へと心を届ける。



「へ、へへ。やっ、たぁ・・・」

先ほどまでの勢いはどこへやら、リュックは急に力が抜けたようにヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。

「リュック、すごいよ」

ユウナがキラキラと輝く賞賛の瞳でリュックの元に駆け寄る。続いてワッカ・ルールー・キマリ、そしてシェリンダも集う。兵士たちもこの幸先の良い大勝利に湧きに湧いた。

「だけど、よくあんな作戦考え付いたなあ」

ワッカが感心してそういうと、腰の抜けたかなりだらしない格好のリュックが呆れたように言葉を返す。

「あのねぇ、ワッカぁ。アタシたち二回も戦ってんだよ? 羽は付いてたけど、あれオルタナの時と同じだったじゃん。いい加減アンデッドの弱点くらい覚えといてよねー」

「あ? は、はは。そーいやそーだな。俺も戦ったんだった」

ガシガシと朱い頭を掻きながら、ワッカはバツが悪そうに小さくなる。

「まぁ、ワッカにそういうことを期待するのが、無理ね」

「ル〜〜〜」

更にルールーに突き落とされた感の情けないワッカの姿に、ドッと笑いの渦が巻き起こり、その場に居合わせた者たちの張り詰めた緊張がほぐれていった。

『リュック、ありがと』

和やかな雰囲気の中で、ユウナはそっと心の内でリュックに囁く。

――― 召喚獣たちがいなくても、私、戦える

こと、アンデッド系に関しては絶大な効果を発揮する聖魔法。白魔法の中でも最高位に属するこの魔法は、白魔法を極めた者しか使えない。この戦いの中でリュックはただ強大な敵を倒すだけでなく、ユウナの戦い方をも示唆してくれたのである。

仲間に頼るのではなく、自分の力でティーダを助けることができる。

ユウナは改めて、この頼りがいのある従姉妹に感謝の目を向けた。リュックもそれに気付き、「えへへ」と悪戯っぽく笑い返す。いつの間にかキマリがリュックの背後に回り、さりげなく立ち上がる手助けをする。

「これからの戦いに勢いがついた。リュックのおかげだ」

キマリに支えられ立ち上がったリュックは、めったに聞かれないキマリの賞賛に、一瞬、目を丸くする。

「へへ。なんか、テレるなあ」

そして、いつものように元気よく片手を振り回して掛け声をかける。

「さ、これからが本番だよお!」





予想していた通り、階段を下に降りていくにつれ、出現する魔物や死人の数が増えていく。それでも先行部隊がだいぶ蹴散らしてくれていたからこそ、それほど進路を邪魔されずに進むことができた。
なにより、突入直前に急遽、飛空艇から追加配布されたフェニックスの尾の効果は絶大だった。襲ってくる相手の大半がアンデッド系だったからである。戦い慣れてない新エボンの兵士たちでも、効率良くアイテムを使えばいかに楽に戦えるのかという見本のような戦闘だった。アイテム班と物理攻撃班とに分かれて、着実におのれの役割を果たしていった。

「おそらく、このあたりだと思います」

今は止まってしまっている自動階段の途中にある踊り場で、シェリンダが立ち止まる。

「いつも何故かここにだけは見張りの兵士がいたんです」

何もなさそうな壁を注意深く調べ始めるシェリンダ。すぐにユウナたちもそれに倣う。

「これじゃない?」

ルールーが足元近い壁際を指差して言った。その指し示す先には確かに小さな突起がある。当然のようにキマリが進み出て、その突起を押してみる。さほど力を入れなくとも、それは動いた。


ゴゴゴゴゴ・・・


壁が横に移動し始め、今までなかった入り口が現れた。シェリンダがほっとしたように呟く。

「きっとこの先に…」

「うん!」

ユウナの顔はその入り口の方に固定されて動かない。その奥にあるものを見透かすかのごとく。
そのユウナにシェリンダは僅かに寂しげな微笑を浮かべて語りかけた。

「私がご同行できるのはここまでです。これから先はユウナ様ご自身で…」

――― ティーダさんを助けてあげて下さい

最後まで言わずに言葉を飲み込む。ユウナが、ハッとしてシェリンダを振り返る。

「シェリンダさんは?」

「私は…。彼らと旧エボン派の中枢部へ行かなければなりませんから」

ここからはお互いの目的が違うのだということを思い出し、ユウナは深く頭を下げる。旧エボン派は試練の間の近くに中枢部を置いているという。ここからであれば、もう目と鼻の先である。既に戦闘に入っているであろうイサールらと早く合流しなければならないのだ。

「本当にありがとう。シェリンダさん」

「いえ。あの…頑張って下さいね」

「シェリンダさんこそ」

名残惜しさは尽きないが、事は一刻を争う。お互いにそれだけ言葉を交わすと、それぞれの目的の方向へと踵をかえす。シェリンダらは今降りてきた階段をそのまま先へと進んでいった。そして、ユウナたちは新たに開いた入り口の中へと踏み入り、更に続く階段を降りていった。

隠し通路であるがため、採光がまったく無く薄暗い。唯一、ところどころに掲げてある松明の光だけが頼りだった。それ故、襲ってくる魔物もいきなり現れる。しかし、むしろ大所帯だった先ほどまでよりも戦い易い。気心のしれた仲間同士の連携プレイは、雑魚相手ならどんな武器やアイテムにも勝る。雑魚と言うにはココの敵は少々手強かったが。

あいも変わらず先頭を突っ走るリュックが、何かを見つけたらしく振り向きざま弾んだ声で叫んだ。

「あそこに扉があるよ!」

降り行く先の階段が途切れ、その前方に重々しい扉が見える。どうやら終着点に着いたらしい。一層暗さの増した禍々しい雰囲気の中、万が一に備えて一同は少し歩調を緩めた。

最初は暗さのため気付かなかったが、近づくと扉が少し開いているのが分かった。


その、扉の向こうには………




--- next to vol.19 ---



○あとがき○

対エフレイエ作戦の補足。
雑魚モンスターと違って、こういうイベントモンスターは一度倒したら普通はそれっきりです。
それが蘇ってくるというのは、アンデッドか死人(しびと)しかないはずなんですね。シーモアもそうだったし。異界送りしてもらってないし。
そこら辺、ご理解いただけたでしょうか?

掟破りの(笑)一斉攻撃も、小説ならではですねぇ。かっかっか。ゲームじゃ、こうはいかねー。(爆)
この時点でのユウナも、召喚魔法使えない分、かなり白魔法の威力が上がってるはず。それしか修行してないし。
ちゃんと以前の話の中でも白魔法の修行だけはしてること、書いてありますし。(伏線好きな作者)

次回はいよいよ最大のクライマックスです!ついに、ついに〜。

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