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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


君に vol.1




雲ひとつなく澄み渡った空。
穏やかな波に眠るように横たわる翠く広がる海。
さざなみが小さく白くその海原を彩っている。
燦々と降りそそぐ強い日差しが寄せる波にキラキラと弾かれる。
おりしもその秩序を乱すかのように現れる一つの水飛沫。

「ぷっは〜っ!」

飛沫の中心に大きな波紋を作りながら顔を覗かせたのは、
輝く金の髪を持つ一人の青年だった。
いや、まだ少年といってもいいくらいかもしれない。
濡れた髪のしずくを飛ばしながら、彼はキョロキョロとあたりを見渡す。

「あ、れ〜?!」

水面に出ればきっと見慣れた光景を目にできると確信していた彼は
一気に脱力してしまう。

「マジっすかぁ〜」

そのまま、プカリと海面にあお向けに浮かぶ。
光を目指して泳いできたのに。
きっとその先にはユウナがいると思っていたのに。

「冗談じゃないっての・・」

これじゃあ初めてスピラに来た時とまるっきり同じだ。

「あの時もキツかったよなぁ」

暗くて、寒くて、そして、たった一人。
何が何だかわからず、怪魚に追いかけられたり、モンスターに
襲われたり、アルベド族にどつかれたり。

「そっか!」

ティーダは、ハタと気がついた。
あの時よりは今の方がいくらかは条件がいいんだ。
そう思い直すとティーダは、今度は体勢を立ち泳ぎに変えて、改めてあたりを見直す。

三方は遥か波間の向こう、そのまま空へと続いている。
残りの方角に雲が湧き上がっているのが見て取れ、
その裾野のあたりに微かに陸地らしきものが見える。

「う〜ん。遠いっすねー」

だが、そんなことも言っていられない。
とにかくそこが本当に陸地であることを願って彼は泳ぎ始めた。



だんだんと陸地が近づいてくると同時にその全貌も見えてきた。
どうやら大陸の一部ではなく、島らしい。
あくまでこちら側から見える範囲での予想だが。
ティーダは海面だけでなく、深く潜って海底の状態も確かめてみた。
海底はその島のあたりだけ急に隆起したようになっている。
水面まで再浮上して島の全貌を確認したティーダは、
それが今まで見たこともない小島だということを知った。
陸地を見つけた喜びも束の間、ティーダは失望に襲われた。
それでもなんとか浜辺まで辿り着くと、浜辺にドサッと仰向けにころがってしまうティーダだった。

「いったいどの辺なんだよ。ここ。」

眩しい日の光を遮るように片腕を顔の上にのせ、ぼそぼそとティーダは呟く。

せっかく現実になれたっていうのに、なんなんだ?この状況は。
それともこれも夢なのか?また違う夢として自覚のないまま存在しているだけなのか?
いや、違う。
ここはスピラだ。
そして、俺は今までとは違う。
何がとははっきりと言うことはできないが、確かに違う。
夢ではなく現実の人としてここに、スピラにいる。
それだけは断言できる。
誰に?
ティーダは腕で目元を隠したまま、自嘲気味に口元を歪めた。

そして、
「よっ、と」
と掛け声とともにおもむろに起き上がると、大きく伸びをした。

「はあぁ〜っ!」

よしっ!
いつまでもこうしていてもしかたがない。
とりあえず現状を把握して、できることから始めるしかない。


ユウナ、君に、再び会うために。




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○あとがき○

今度は、ティーダの一人語りです(笑)
今回は、プロローグの扱いなので少し短めですが、次回からもっといろいろティーダくんに辛い目にあってもらおうと画策しております(爆)
裏話などは、次回以降そろそろと・・・。

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