〜 【Relational Novel】 〜
◇◆◇FINAL CRYSTAL◇◆◇

エピソード3<FFX>





− Pride Of Blue −



召喚士になる。
そう決めたのは、いつだったかな。
もお随分昔のことに感じる。ルールーも、ワッカさんも、チャップも、みんなすっごく驚いて、
大反対したんだっけ。
でも、私は意志を変えなかった。
納得はしてくれなかったけど、3人とも認めてくれた。
私が召喚士になることを。

召喚士。
それはスピラの希望の光。
己の命と引き替えに、スピラにナギ説をもたらす。

本当は、召喚士になるの、怖かった。
ザナルカンドまで旅して、究極召喚手に入れて、シンを倒して・・・・
大召喚士として、死ぬ。
死にたくなかったよ。
でも、召喚士になるしかなかったんだ。

父さんは召喚士だった。
スピラに長い間訪れることのなかったナギ説をもたらした。
シンを倒した4人目の大召喚士。
10年前、私を残して死んでしまった。
母さんは、もっと前にシンに殺された。
私は独りぼっちになってしまった。
けど、独りじゃなかった。
独りだった私をキマリが迎えに来てくれた。
それから、ずっと一緒にいてくれる。
ビサイドに来てからは、姉さんみたいなルールー、兄さんみたいなワッカさんとチャップと、いつも一緒だった。
だから、寂しくはなかったよ。

でもね

私は、
「大召喚士ブラスカ様の御息女」で
「ユウナレスカ様に肖った名前の娘」だ。
ユウナレスカ様は最初にシンを倒した方。
周りのみんなは、いつもそんな目で私を見ていた。
「ユウナ様ならば、シンを倒して下さる。」
「ブラスカ様の血筋ですもの。」
期待だけが、肩に重くのしかかる。
人々は、私のナギ説を望んでいる。

誰一人、「私」を見ていない。
「私」は認められていない。

みんなに必要なのは、
「召喚士ユウナ」であって、
「少女ユウナ」じゃない。
今の私には、価値がない。そんな気がした。
私は召喚士でなければ、何の価値もない。
だから、誰にも認めてもらえない。

人々の期待を裏切るなんて、出来ないよ。
認められないままは、イヤだよ。
2つの思いを満たすためには、
召喚士になるしか道はなかった。

幸か不幸か。
私は召喚士としての才能はあった。
みんなに言わせれば、
「大召喚士の娘なのだから当然」なのだろう。
従召喚士になって、辛い厳しい修行の日々だった。
多くの召喚士を志す者が、ここで挫折して行くそうだ。
私は、諦めるわけにはいかなかった。
修行している間にも、シンは多くの尊い命を奪っていってしまった。
シンが生むのは、悲しみ、憎しみ、苦しみ、恨み・・・・・
ずっと一緒にいたチャップも、シンが奪っていってしまった。
悔しかったよ。
私がもっと早く召喚士になっていたら・・・
チャップやみんなが死ぬことはなかったのに・・・
自分を責めた。
無力な自分を呪った。
何を憎めばいいのか、分からないよ。
シンは私たちの罪。
ならば、チャップやみんなを殺したのは私たち自身だ。

そんな想いとは裏腹に、私は死を恐れていた。
誰かの死にも耐えられないけど、私も死にたくない。
自分の心との葛藤が、ずっと続いた。

17になった頃。
召喚士になるための試練、つまり祈り子様との対面を1ヶ月後に控えていた。

それでも、私の戦いは終わらなかった。

父さんは、どんな気持ちで召喚士の道を選んだんだろう?
      母さんの仇?
      スピラの平和?
      私のため?
考えても答えは出ないよ。
だって、私は父さんじゃない。

私は?
私は何のために召喚士になるの?
      シンを倒すため。  
                   
      何故?
      
      これ以上犠牲を出さないため。      

      そのために命を捨てるの?

分からない。分からないよ。

いつの間にか海に来ていた。
悩むときは決まってこの場所。
白い砂浜に座って、
波の音とカモメの声を聞いて、
熱い太陽を浴びて、
青い空と碧の海を見つめて。
この場所が、ビサイドで一番好き。

確かに認めてもらいたい。私という存在を。
これ以上犠牲を出したくない。
幼いときから、召喚士の父さんに憧れて、召喚士になるのは夢だった。

命かける理由、こんなものなのかな?

私の中の、もう一人の私が問いかける。
決心が、揺らぐ。
私のナギ説が訪れても、
それはまやかしの平和でしかない。
シンは何度でも甦る。
人々の罪が消えるまで・・・・

どうすればいいんだろう?
何をするのが正しいんだろう?
抱えた膝に顔を埋める。

−−−−−−−

はっとして顔を上げる。
「何かが・・・呼んでる。。?」
音がした。
ううん、音じゃない。心に直接響いた。
立ち上がって、砂浜を見渡す。
いつもと、なんら変わらない風景。

−−−−−−−

また!
どこ?どこで呼んでるの?

何かを感じて、フラフラと足を進める。
目で見えない。
耳で聞こえない。
感覚は何一つ役に立たないけれど、
心で感じるの。

この感じ。
まるで、祈り子様・・・?

フラフラ歩いて、辿り着いたのは村から遠く離れた小さな入り江。
こんなところまで、しかも一人で来たのは初めて。
波に揺れる水面が、陽の光を反射して光る。
「!!」
いた。
それは海底にいた。
私は着物が濡れるのも気にせずに、海に入った。
浅い入り江の底。
他の岩に混じってそれはいた。
海から生まれたのかと思わせるほど、澄んだ碧の石。
ビサイドの海の色、そのものだ。
少しだけためらって、その石に手を触れる。
恐る恐る、慎重にゆっくりと、両手で海の中からすくい出す。
直接に陽を浴びて、海底にいるよりも美しく輝く。
宝石?
ガラス?
スフィア?
ううん、違う。
そんなちっぽけな物じゃない。
美しく、どこか懐かしい。

「あなたが・・・私を呼んだの・・?」
自然と唇から言葉が零れる。

−−−−−−

それは、静かに答えた。

「私に・・何か・・用ですか?」

−−−−−−

何を言っているのか、分からない。
静かに心に響く。

「助けて・・・下さい・・・」

言葉と共に、涙が頬を伝う。

−−−−−−

「私、どうしていいか分からない。
 みんなの期待に応えたい。
 父さんみたいになりたい。
 でも・・・死にたくない・・・」

泣き叫んでいた。
物言わぬ石に向かって。
でも、誰かに聞いて欲しかった。助けて欲しかった。
このままだと、私は私じゃなくなるから。

−−−−−−−

体の力が、フッと抜ける。
冷たい海の中に座り込む。
涙が止まらない。

たくさんの人が泣いて、海を作ったんだろうな。
私の涙も、海になっていく。
泣かないって決めたのになぁ。
父さんがいなくても、みんながいるから大丈夫って自分に言い聞かせてたのに。
みんなに心配かけたくないから、泣かないって。
石を胸に抱いて、涙を流し続ける。

−−−−−−−−−

優しく、温かく、心に響く。

「ありがとう・・・
 何か、分かったような気がします。
 私、やってみます。召喚士になってみせます。」

涙を手の甲で拭う。

−−−−−−

懐かしい感じ。
幼い時に、いつも感じていたような気がする。
この感じ・・・

「かあ・・さ・・ん?」

それっきり、何も感じることが出来なくなった。




「「ユウナ!!」」
名前を呼ばれて、我に返る。
呼ばれ慣れた、ルールーとワッカさんの声。
「何してるのよ、こんな時間まで!?」
ルールーに怒られて辺りを見回すと、すでに真っ暗。
青かった空は、インディゴに色を変えて星が瞬いている。
「ごめんなさいっ!」
「あーあー。
 風邪引くぞ。立てるか?」
ワッカさんが海に入って、私の顔をのぞき込んだ。
海水が、座り込んだ私の胸の高さまであった。
「よっ、と。」
ワッカさんに抱えられて海から上がる。
「いつからこうしてたの?
 すっかり冷え切ってるわ。」
ルールーの声が心配してる。
「こりゃ立てないだろ。
 おぶって帰るしかないな。」
「すみません・・・」
申し訳ないけれど、ワッカさんにおぶられて村に帰った。
2人とも、すっごく心配してくれたのが、痛いほど伝わってきたよ。
私は、石を大事に懐にしまって、二人にもこのことは話さなかった。
それを知ってか知らずか、二人は深く追求してこなかった。

それから一ヶ月。
今までよりずっと厳しい修行を課せられた。
召喚士になるための。
辛くても、頑張れた。
ずっと、母さんに話しかけてたから。
いつもいつも、胸にしまっておいた。

海で死んだ母さんは、こんな形でもう一度私の前に姿を現してくれたんだよね?
最初に感じた懐かしさは、アルベドの母さんの瞳の碧だったから。
優しい、大好きな母さんの色だから。

母さん。
明日、祈り子様のところに、試練の間に入ります。
召喚士になるの。
覚悟は出来てます。
死の覚悟じゃないよ。死ぬのは、まだ少し怖い。
でも、幸せになりたい。
みんなを幸せにしたい。
ねぇ、母さん。
私に力を貸して下さい。
シンを倒すための力を。
もっともっと強くなりたいんです。
涙を流さなくてすむくらい。
いつも笑っていられるくらい。

召喚士とガードは、スピラの希望。

母さんの碧の瞳、大好きよ。
父さんの青の瞳、大好きよ。
二人とも、大好き。

青。
空の色。海の色。父さんの瞳の色。
それから・・・
私の誇りの色。

父さんと母さんの娘であること。
召喚士になること。

私の全てが、私の誇り。
青の誇り。

碧の石を、握りしめる。
握りしめた指の隙間から、光が漏れる。
光に惹かれて、指を開く。
石が光を放ちながら、色を変える。
陽の光を浴びて輝く海の色から、無限に広がる海の色に。
母さんの碧から、父さんの青に。

母さん。
私の思い、届いたのね?
父さん。
私に力を貸してくれるの?

ありがとう。

−−−−

ありがとう。

私の誇り。
それだけあれば、他には何も必要ない。
強い思い、願い。
私らしさ。

大好きな海。
出会った場所で、お別れです。
私は、もお大丈夫だよ。
一緒にいなくても、一緒にいるよ。

ありがとう。

石を思いっきり遠くに放り投げる。
青い石は、青い空で光を放ち、碧の海に沈んだ。
遠くには飛ばなかったけど、大好きな人との別れ。

手元に石はない。
残ったのは、誇りだけ。
海よりも澄んだ誇り。
空よりも広い誇り。
私の誇り。
青の誇り。





その石は、母さんは願いを叶えてくれました。
力を与えてくれました。
強さを与えてくれました。
今も、違う世界で、違う誰かの願いを叶えているんじゃないかな。

ありがとう、と伝えて下さい。
私は、誇りを胸に前に進みます、と。



エピソード3 FIN.





悲しみの青。
憂いの青。
希望の青。
青の石は、次なる主人を求めて世界を彷徨う・・・・



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