降るようなKISSを君にあげよう < 後 編 > |
ふれるだけのKISSが、幾度も。 何度でもついばむ、小鳥のように。 少しずつ、少しずつ、ふれあっている時が長くなっていって。 緩やかに乱れる黒髪を囲うように置かれていたスコールの両腕が、リノアの身体を抱きしめる頃には、深く合わさった唇の奥で、熱く、互いの舌を絡ませ合っていた。 舌先で突つき合って、歯列をなぞって。 甘い痺れが、くちびるから……全身に広がっていく。 僅かに離れたリノアの口端から、官能の喘ぎが洩れる。 「……ん、…っぁ…」 濡れた音と重なるそれは、なお一層の興奮を掻き立てていって…。 スコールの手が、妖しくリノアの身体を這い回る。 いつの間にかはだけられた胸元に侵入してくる大きな手。 柔らかい膨らみを、そおっと揉みしだかれると、真ん中の桜桃がツンと震える。 名残惜しげに離れていった薄い唇が、今度は首筋を伝っていく。 唇と舌で花びらを散らしながら。 「はっ…んっ…あ、…ん」 心細げに立ちあがっていた小さい丸みを口に含まれると、もうリノアは声を抑えられなかった。 生温かい舌で優しく押しつぶされた後、愛おしそうにねっとりと絡まる。 ちゅっ、と音を立てて吸い上げられると、ビクンと全身が跳ねる。 リノアはもう、スコールの背中に回している腕にさえ、まったく力が入らなかった。 無意識に首を振る度に、サラサラと長い黒髪が艶やかに波を打つ。 「スコー、ル…。あ…、んん…」 一方、スコールの手は忙しなく動いている。 その手で、リノアを生まれたままの姿にするために。 肌を覆うものを取り払うごと、変わりにとばかりにスコールのKISSが降る。 細くて白い両腕に。 滑らかな腹部に。 恥かしげに固く閉じ合わされた部分をわざと通り過ぎて、すらりと伸びた両の脚へと。 綺麗に切りそろえられたつま先まで、リノア全部が自分のものだと主張するかのように。 全身に、KISSで所有の証を刻み込んでいく。 ふと気づくと、リノアの閉ざされた瞳が、静かに濡れていた。 頭をもたげたスコールが、再びリノアの上に這い上がっていった。 「リノア?」 どうして泣いてるんだ? という意を込めた呼びかけに。 瞳を開いたリノアが、ふわりと微笑んだ。 ツッとひとしずくの涙を零して。 「うん。…嬉しい、の…。私、スコールのもの、なんだって……思えて…」 「……リノア…」 愛しくて。 愛しくて。 愛しくて。 もう、どうしようもないくらい、愛しくて…。 「リノアっ!」 本当はもっと言いたいんだ。 好きだって。 愛してるって。 一番、大切なんだって。 でも、この口がどうしても思ったことを言葉にしてくれない。 今まで自分の気持ちを伝えることを避けてきた、そのツケが回ってきたみたいに。 ―― でも、今言わなければ、いったいいつ言うっていうんだ… 半分以上熱に浮かされた頭の隅で、必死に勇気をかき集める。 その間にも身体はリノアを、もっと、と欲していて。 ようやく、最後まで秘められた濡れた場所へと、口付けが降りていく。 今ではもう抵抗などできなくなっている白い脚をそっと広げて、その間に身体ごと滑り込む。 舌で蜜を掬うように口付けると、ビクビクっと感電したかのような甘美な応えが返ってきた。 無意識に伸ばされた手がスコールの髪を絡めとリ、妖しく誘う花弁にKISSを送るたびに、指からもダイレクトにリノアの歓喜が伝わってくる。 「…っ…んっ…ぅ…はぁっ…ぁ…」 快感を懸命に押し殺した声で、喘ぎ泣いているリノア。 その声を聞いた途端、既に固く張り詰めていた分身が、これ以上ないくらいに密度を増した。 もう限界だった。 スコールはおもむろに身を起こし、彼自身を受け入れるために濡れそぼる場所へと、ためらいもなく侵入していく。 「はぅっ!……ぁっ…あぁ…ス…コ、ル…」 悲鳴とも喘ぎとも感嘆ともつかぬリノアの吐息が、熱く己を包み込む内壁とともに、スコールの身体の芯まで溶かしてしまいそうになる。 「り、ノア…」 「スコー、ルっ。すこーる…すこー…る…」 舌足らずに聞えるほどの甘えた声音は、繰り返される自分の名前の数だけ愛を囁かれているようで…。 永遠に、このまま一つに繋がっていたいと願わずにはいられない。 緩慢に、激しく、お互いを一番深いところで感じていたい。 不規則な律動に紡ぎ出される濡れた淫猥な音と、無機質なベッドの音が、BGMたる不協和音を奏でていって…。 「あああっ! あっあっ、…すこーるっ…はっあぁぁ…」 「リッ、ノア!」 その瞬間。 − アイシテル − 感極まった絶頂の最中、リノアの耳元で、素早く呟いた。 意識していたわけではなく。 言葉が、勝手に発されていた。 声が小さ過ぎて、もしかしたら聞えなかったかもしれない、と。 言ってしまった後で、スコールはすぐに後悔していた。 こんな大事なことを、劣情のままに口走ってしまうなんて…。 けれど……。 スコールは、見た。 大きく仰け反っていたリノアの白い首が、汗で濡れた黒髪を纏わりつかせながら、しなやかに戻ってきて。 彼の目の前に、これまで見たこともないほどの幸せそうなリノアの微笑みを。 そして。 「うん。スコール。私も、愛してる」 まだ、夜は更け始めたばかり。 もっと君にKISSをあげよう。 たくさんのKISSをあげよう。 白い肢体を、薄紅色の証で埋め尽くさんほどに……。 <END> |