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〜 FF NOVEL <FFVIII> 〜
by テオ



降るようなKISSを君にあげよう

< 後 編 >







 ふれるだけのKISSが、幾度も。

 何度でもついばむ、小鳥のように。

 少しずつ、少しずつ、ふれあっている時が長くなっていって。

 緩やかに乱れる黒髪を囲うように置かれていたスコールの両腕が、リノアの身体を抱きしめる頃には、深く合わさった唇の奥で、熱く、互いの舌を絡ませ合っていた。
 舌先で突つき合って、歯列をなぞって。
 甘い痺れが、くちびるから……全身に広がっていく。
 僅かに離れたリノアの口端から、官能の喘ぎが洩れる。
「……ん、…っぁ…」
 濡れた音と重なるそれは、なお一層の興奮を掻き立てていって…。
 スコールの手が、妖しくリノアの身体を這い回る。
 いつの間にかはだけられた胸元に侵入してくる大きな手。
 柔らかい膨らみを、そおっと揉みしだかれると、真ん中の桜桃がツンと震える。
 名残惜しげに離れていった薄い唇が、今度は首筋を伝っていく。
 唇と舌で花びらを散らしながら。
「はっ…んっ…あ、…ん」
 心細げに立ちあがっていた小さい丸みを口に含まれると、もうリノアは声を抑えられなかった。
 生温かい舌で優しく押しつぶされた後、愛おしそうにねっとりと絡まる。
 ちゅっ、と音を立てて吸い上げられると、ビクンと全身が跳ねる。
 リノアはもう、スコールの背中に回している腕にさえ、まったく力が入らなかった。
 無意識に首を振る度に、サラサラと長い黒髪が艶やかに波を打つ。
「スコー、ル…。あ…、んん…」
 一方、スコールの手は忙しなく動いている。
 その手で、リノアを生まれたままの姿にするために。
 肌を覆うものを取り払うごと、変わりにとばかりにスコールのKISSが降る。
 細くて白い両腕に。
 滑らかな腹部に。
 恥かしげに固く閉じ合わされた部分をわざと通り過ぎて、すらりと伸びた両の脚へと。
 綺麗に切りそろえられたつま先まで、リノア全部が自分のものだと主張するかのように。
 全身に、KISSで所有の証を刻み込んでいく。
 ふと気づくと、リノアの閉ざされた瞳が、静かに濡れていた。
 頭をもたげたスコールが、再びリノアの上に這い上がっていった。
「リノア?」
 どうして泣いてるんだ? という意を込めた呼びかけに。
 瞳を開いたリノアが、ふわりと微笑んだ。
 ツッとひとしずくの涙を零して。
「うん。…嬉しい、の…。私、スコールのもの、なんだって……思えて…」
「……リノア…」

 愛しくて。

 愛しくて。

 愛しくて。

 もう、どうしようもないくらい、愛しくて…。

「リノアっ!」

 本当はもっと言いたいんだ。
 好きだって。
 愛してるって。
 一番、大切なんだって。
 でも、この口がどうしても思ったことを言葉にしてくれない。
 今まで自分の気持ちを伝えることを避けてきた、そのツケが回ってきたみたいに。

―― でも、今言わなければ、いったいいつ言うっていうんだ…

 半分以上熱に浮かされた頭の隅で、必死に勇気をかき集める。
 その間にも身体はリノアを、もっと、と欲していて。
 ようやく、最後まで秘められた濡れた場所へと、口付けが降りていく。
 今ではもう抵抗などできなくなっている白い脚をそっと広げて、その間に身体ごと滑り込む。
 舌で蜜を掬うように口付けると、ビクビクっと感電したかのような甘美な応えが返ってきた。
 無意識に伸ばされた手がスコールの髪を絡めとリ、妖しく誘う花弁にKISSを送るたびに、指からもダイレクトにリノアの歓喜が伝わってくる。
「…っ…んっ…ぅ…はぁっ…ぁ…」
 快感を懸命に押し殺した声で、喘ぎ泣いているリノア。
 その声を聞いた途端、既に固く張り詰めていた分身が、これ以上ないくらいに密度を増した。
 もう限界だった。
 スコールはおもむろに身を起こし、彼自身を受け入れるために濡れそぼる場所へと、ためらいもなく侵入していく。
「はぅっ!……ぁっ…あぁ…ス…コ、ル…」
 悲鳴とも喘ぎとも感嘆ともつかぬリノアの吐息が、熱く己を包み込む内壁とともに、スコールの身体の芯まで溶かしてしまいそうになる。
「り、ノア…」
「スコー、ルっ。すこーる…すこー…る…」
 舌足らずに聞えるほどの甘えた声音は、繰り返される自分の名前の数だけ愛を囁かれているようで…。
 永遠に、このまま一つに繋がっていたいと願わずにはいられない。
 緩慢に、激しく、お互いを一番深いところで感じていたい。
 不規則な律動に紡ぎ出される濡れた淫猥な音と、無機質なベッドの音が、BGMたる不協和音を奏でていって…。
「あああっ! あっあっ、…すこーるっ…はっあぁぁ…」
「リッ、ノア!」
 その瞬間。


 − アイシテル −


 感極まった絶頂の最中、リノアの耳元で、素早く呟いた。
 意識していたわけではなく。
 言葉が、勝手に発されていた。

 声が小さ過ぎて、もしかしたら聞えなかったかもしれない、と。
 言ってしまった後で、スコールはすぐに後悔していた。
 こんな大事なことを、劣情のままに口走ってしまうなんて…。

 けれど……。

 スコールは、見た。

 大きく仰け反っていたリノアの白い首が、汗で濡れた黒髪を纏わりつかせながら、しなやかに戻ってきて。
 彼の目の前に、これまで見たこともないほどの幸せそうなリノアの微笑みを。

 そして。

「うん。スコール。私も、愛してる」



 まだ、夜は更け始めたばかり。


 もっと君にKISSをあげよう。


 たくさんのKISSをあげよう。


 白い肢体を、薄紅色の証で埋め尽くさんほどに……。








    <END>
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