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〜 FF NOVEL <FFVII> 〜
by テオ


Sweet Memory








―― ほろ苦い だけど 甘い…記憶 ――




 煌びやかなネオン。
 賑やかなミュージック。
 楽しげに浮かれたった人々。
 ここは、世界一のプレイランド・ゴールドソーサー。


何とか入場パスとGPを手に入れた俺たちは、しばらくこの人口の楽園で今までの旅の疲れを吹き飛ばそうということになった。夕方になったらここの唯一のホテルに集合。それまでは各自、自由行動。トントン拍子に予定が決められている間に、何気なくエアリスの前に立つと、スッと腕を取られ、思いがけないほど強い力で引き寄せられる。

「ねっ、行こ?」

「え? お、おい…」

チラッと視線を流すとティファが複雑な顔をして、そのままシドたちと行ってしまった。ユフィやレッドXIIIたちも思い思いに自分たちの行きたいところへ繋がっているシューターへと飛び込んでいる。

「ん〜。最初はどこ行こっか?」

シューターの前の案内板の前であれこれ思索しているエアリス。
これからへの不安な思惑など微塵も見られない。

「そうだな。たまには全部忘れて、思いっきり遊ぶのもいいか…」

「そうそう」

何がそんなに楽しいのだろうと思えるほど、エアリスははしゃいでいた。

「観覧車もいいけど、これはあとのお楽しみっ! だから〜、ここ! ここにしよっ? ね?」

「あ、ああ」

すっかり主導権を取られてしまった感はあったが、俺はこういう所にはまったく疎い。
エアリスにすべて任せるしかないな、ともうすっかり諦めていた。

「何してるの? クラウド。行くよ?」

案内板の見たこともないアトラクションの数々に、これはどんなものなんだろうと唸りながら考えを巡らせていると、既にシューターに入りかけていたエアリスに呼ばれてしまった。

「あ? ま、待ってくれ」

こんな所に一人置いていかれたら堪ったもんじゃない。こんなナリして迷子なんてゴメンだ。
慌てて駆け寄り、すぐにエアリスが入っていったシューターへと俺も飛び込んでいった。

シューターの中は緩いカーブを描いていて、淡い色とりどりのライティングに包まれ、それほどスピードや恐怖は感じない。かえってこれからの時間への期待感が増してくるようだった。さすがに子供もくる場所なのだから、それなりの配慮をしてあるのだろう。
フッと重量感が増したと思ったら、いきなり視界が開けた。どうやら目的地に到着したらしい。
さして衝撃もなく、ふわりとシューターの出口に降り立つ。

「ここは?」

「えへ。スピードスクウェア。要するにコースターに乗ってシューティング!」

悪戯っ子のように首を竦めて、エアリスが先を行く。遅れないように俺も進みながら、知らずと不平を洩らしてしまう。

「シューティング〜?」

「うん。…いや?」

足を止めたエアリスが俺の方を振り返り2・3歩戻ってくると、ほんの少し腰を屈めて上目づかいに覗き込まれた。思わず…ドキリとしてしまう。

「い、嫌って訳じゃ…」

「良かったぁ〜。実はねぇ。欲しい物、あるんだ」

「欲しい物?」

「うん。高得点出すとね、貰えるアイテム」

「高…得点…」

「うん。だから、頑張ってね! クラウドっ」

――・・うう・・
――だ、大丈夫かな・・・・
――そんな無邪気に頼りにされても・・・

剣ならまだしも、射撃関係はそれほど得意な方じゃない。
そんな俺の当惑を感じたのか、にこっとエアリスが微笑む。

「だいじょぶ、だいじょぶ」

「…まいったな…」

すっかり信じきってるエアリスを見てると、なんだか出来そうな気がしてくるから不思議だ。
俺も、案外、単純なんだな・・・。

「あ、空いてる。クラウド、早くっ」

「…はぁ…。はいはい」

楽しそうに乗り場へと駆けていくエアリス。両手を広げて呆れながら、俺も徐々に気分が高揚してきてるのを自覚していた。

エアリスといると楽しい。
その笑顔を見ていると、不安や疑惑なんてものさえ洗い流してくれるようだ。

――何でだろう…
――まるで、すべてを知っていて許してくれているような……
――すべて…?
――すべてって、何だ?

そこでいつも思考は途切れてしまう。
俺自身も気付かない、何かに抑制されているかのように、頭が身体が考えることをやめてしまう。
そして、俺はそれを不審にも思わない……。



最新式のくせにいやにレトロっぽい音をさせて、俺とエアリスの乗ったコースターが進んでいく。
3D立体映像で映し出されるゴーストや戦闘機、中には星やつらら・風船まであって、見ているだけでも飽きないほど多種多様のターゲットが次々と出てくる。
だけど、俺たちはそんな映像を楽しんでいる余裕などなかった。

「ほらっ、クラウド! あそこあそこ!」

「わかってるっ!」

360度、どこからターゲットがでてくるか分からない。俺はひとつでも打ち洩らすまいと、必死でビームを打ちまくっていた。

「あ、今度はこっち! あ、あっちからも〜」

「くっ!」

「あーっ。外しちゃったぁ」

「うるさいぞ、エアリスっ」

「えー、教えてあげてるんでしょ。あ、又、来たっ」

「くっそぉ〜」

この時の俺は、完全に目が据わってた、と思う・・・
そこらの雑魚モンスター相手の方がよほど楽だと思えるほど、このゲームは難しかった。
いや、普通の得点ならば簡単に出せるはずだ。それくらいの腕はある。
しかし、エアリスの欲しがっているアイテムは普通にやってたんじゃ絶対に取れないってほど、高得点をあげなければ手に入らないんだ。
よほどやり込んだ経験者か、そう、反則技でも使わない限り・・・

大量の風船がゆっくりと取り巻くサービスステージを抜けると、ほんの少しのインターバルがあった。
ふと横を見ると、エアリスが眉目をしかめて、残念そうな顔をしている。

「この調子だと、ちょっと無理かなぁ」

「う、ん。さっきのとこが、な…」

するとエアリスがいきなり手を振って、大声で言い募った。

「あ、いいのいいの。気にしないで。できたら欲しかったなーってだけ…」

― パシッ ―

「わっ、ダメだ! 変なとこ押し…」

― ビーーーーッ ―

「あ、れ?」

― ポスッ ―

「当たった?」

視界の隅に入ってきていた、少し離れた場所に浮かんでいた飛空船。
それのどこかに、エアリスの手が触れて発射されてしまったビームが当たったらしかった。

「わっ! 見て見てっ! クラウドっ!!」

「え?」

「得点がっ!?」

言われて、目の前のスコアゲージを見てみると、数字がものすごい勢いで回っている!

「な、何だ?」

「すごい……。あ、止まった…。えっ!?!」

やっと止まったと思ったのも束の間、数字が変な表示になってしまっていた。

「げっ!」

「何? これ…」

その不可解な現象のため、残りのシューティングは散々だった。
集中力が途切れてしまったせいか、当たればかなりの得点になっただろうUFOを始め、簡単なターゲットでさえ外してしまっていた。

「あ〜あ、ダメだったね」

「…ごめん」

「ううん、いいの。こっちこそ、ごめんね」

口ではそう言いながらも、二人がっくりと肩を落として終点に到着した。

だがコースターから降り立った途端、派手に鳴り響くファンファーレと煌めく電飾。

「な、なんだ?!」

<最高得点:28,365>

「は?」

<獲得アイテム:アンブレラ>

「え?」

俺もエアリスも何が何だかわからぬまま、賞品のアンブレラが手渡された。
しかも得点も、普通とは桁が違う。確かにスコアはちゃんと回ってはいたけど…ゲージが表示できなくなるくらい…。

「やったね! クラウド。嬉しい!」

「あ? あ、ああ…」

――狐に摘まれた、とでも言おうか…
――それとも、狸に化かされた、のか…
――いや、そんなことはどうでもいいんだが……

とにかく、俺たちは目的のアイテムを手に入れた。
純粋に俺の腕だけで獲得したんじゃないってことが、ちょっと悔しいけど…。

「ありがとね? クラウド」

賞品のアンブレラを手にして本当に嬉しそうなエアリスを見ていたら、そんなこだわりなんてどうでも良くなってくる。

「いや、うん。良かったな、エアリス」

「うんっ!」

「・・・」

――何で、この人はこんなに素直で無邪気なんだろう
――どうやら複雑な生い立ちらしいエアリス
――いろいろ、辛い目にも会って来たんだろうに…

そのすべてを包み込むような天真爛漫さに、俺は戸惑い、惹かれ、魅了されていく。

――だけど

俺、の方があと一歩を踏み出せない。
ティファのこともある。
セフィロスを追うという困難な旅の途中でもある…。

しかし、それ以前に、俺の感情が……不可解なんだ。
まるで、べったりと分厚い暗幕でも掛けられているような…。

またもや止まってしまいそうな思考の壁に、俺は頭(かぶり)を振っていたらしい。
エアリスがすぐ傍までやってきていて、不思議な笑みを浮かべて言った。

「いいんだよ、クラウド。今は、考え過ぎちゃだめ…」

「え?」

「さっ! 次行こ、次。うーん、観覧車!」

大事そうに抱えているアンブレラを持っているのとは違う手で、俺の手を取り引っ張っていく。
目の前で揺れる、薄いピンクのリボンと柔らかそうな髪。
ふわりと流れてきた幾すじかの髪が俺の頬に触れ、優しい香りが鼻をくすぐる。
思わず、手を伸ばし抱きしめてしまいそうになる。
途端にエアリスが振り返った。

「!」

慌てて俺は手を引っ込める。

――……焦った……

「クラウド」

「…」

俺の取ろうとした行為を見透かされた気がして、言葉を返せないでいると。

「その時がくれば、わかるから。今は深く考えないで? ね?」

「……。エアリス?」



その後に乗った観覧車でも、いくつも大事なヒントを言ってくれてたエアリス。


『本当のあなたに、会いたい』





       エアリス

          儚い夢のように

       けれど…

          誰よりも、鮮やかに

       与えられた宿命に負けることなく

          いつも、懸命に生きていた……




この地を踏むたび 思い出す



―― 君との楽しかった想い出を ――







○あとがき○

FF7でとのリクエストで何を書こうかと思案したところ、いろんなところでクラエア希望の意見が多かったのでこういう話になりました。

ただ、ハッピーエンドは、作者的に書けないのです。
基本的にゲームの内容に沿った小説を書くのが信条なものですから。ですから、クラエアの甘い話となると、こういう風にゲームであった一場面を深く掘り下げての内容になりますね。(後はどこだろ? コスタ・デ・ソルあたりかな?(笑))
それに、今回はちょっとだけ切なさも入れたかったので、こういうタイトルに…(^^ゞ

セリフ等は、進行都合上かなり変えてあります。ご了承下さいませ。

文中のスピードスクウェアについて。
初回版をやりこんだ方なら、お分かりになったはず(苦笑)
有名な(?)バグ裏技のことを書いてます。事実、あれで私は30000点以上行った! インター版からは修正されててなくなってしまったようですが…(残念)
あの技がないと、すっごく難しいんですよ、5000点以上取るのって。ね? いちお、裏技なしでも5000超えたこともありますが。
マニアックなお話でした・・・(汗)

<m(__)m>ペコリ

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