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〜 FF NOVEL <FFVII> 〜
by テオ





悲 恋 回 想

<ルクレツィア/ヴィンセント>



−ルクレツィア−

今日、とっても嬉しいことがあった。
あの宝条博士から声をかけてくださったの。
神羅の科学者の中でも第一人者のあの宝条博士が。
私たち科学者の憧れの的の方が私に話し掛けてくれて、
しかも、今度自分の研究グループに入らないか、ですって。
こんな嬉しいことって他にある?
もう、信じられないくらい。
夢じゃないかしら。
ああ、でも、それも明日研究所に行ってみれば分かること。

そのことをヴィンセントに話したら何だか変な顔をしていた。
どうしたのかしら?
でも、彼はまた明日から任務らしい。
いつもいないんだから・・・。
寂しいな。
なるべく早く帰ってきてね。



−ヴィンセント−

また、明日から出かけなければならない。
タークスとしての任務だから仕方がないのだが、
今回はなんだか気が乗らない。
ルクレツィアの話を聞いたからだろうか。
彼女は明日から宝条の研究所に移るらしい・・・。
宝条・博士。
あいつだけは、好きになれない。
タークスとして捕獲した人の形をした獲物を
何度、あの研究所に送ったことか・・・。
そして、あの研究所から出てきた獲物を見たことがない。
おそらく・・・・・。
いかん、オレはタークスなんだ。
自分の任務だけ、忠実にこなしていればいい。

だが、ルクレツィアのこと、気になる・・・。



−ルクレツィア−

興奮だわ。
本当にすごいわ。宝条博士。
私なんかが考えも及ばないような研究を
次から次へと完成させていく。
天才とは彼のようなことをいうのね。
そんな人の助手として働けるなんて
なんて私って、幸運なのかしら。

今日もヴィンセントは帰ってこない。
もう、私のことなど忘れてしまったのかしら。
いくら任務だからって、連絡くらいくれてもいいのに。
薄情者!



−ヴィンセント−

しくじった。
今回の任務は、危険はないと聞かされていたのに。
相手が追い詰められた鼠のように反撃してきた。
それも予想外の物をもって。
まさか、爆薬を抱えて突進してくるなんて、誰が予測する?
相手も吹っ飛んだが、オレもかなりの痛手だ。

ルクレツィアに連絡したい・・・。
だが、この状態では・・・。
元気でやっているだろうか。
もう、一月も会っていない。



−ルクレツィア−

なんてこと、宝条博士に食事に誘われてしまったわ。
ああ、嬉しいけど、なんだか緊張してしまう。
何を着ていけばいいの。
ああ、明日はきっと一日中仕事が手につかないわ。
あ、いけない、いけない。
その宝条博士の助手が私の仕事だものね。
浮かれてミスなんかしたら、お食事もダメになってしまうわ。
気をつけなくちゃ。

今日もヴィンセントから連絡がない。
もう、知らないから・・。



−ヴィンセント−

やっと明日には帰れそうだ。
怪我もなんとか動けるまでにはなった。
この任務が極秘だったから、
怪我の療養中も外部との連絡が一切とれなかった。
それも明日になれば、本部に帰れる。
報告さえ終われば、しばらくは休暇だ。

ルクレツィア、心配してるだろうな。
早く、会いたい。



−ルクレツィア−

あああ、どうしましょう!
私、私、もうどうにかなってしまいそう。
今日、宝条博士にプロポーズされてしまった・・・。
あの、宝条博士に、よ。
なんて、幸運なのかしら。
科学者としても男性としても、最高の方。
その方に求められるなんて。
でも・・・。
どうしてなのか、自分でもわからない。
即答できなかった。
何も断る理由なんかないのに。

ヴィンセントが今日、帰ってきた。
いくら聞いても、連絡くれなかった理由を教えてくれない・・・。
やっぱり、ただの幼馴染としてしか
見てくれてなかったんだろうか、私のこと。
一応、明日、相談してみようかな。



−ヴィンセント−

やっと任務が終わり、休暇に入れた。
帰宅する前にルクレツィアを訊ねたら、
彼女は案の定、心配してくれてたみたいだ。
しつこく連絡しなかったことを責められたが、
本当の理由を話す訳にはいかない。
こういう時、気の利いたウソのひとつでもつければいいのだが・・・。
どうも苦手だ。

だが、なんだか、今日の彼女は変だった。
何かこう、浮かれているような・・・。
何か悪い予感がする。
嫌だな・・・。
職業柄、こういう悪い予感に限って当たってしまう。



−ルクレツィア−

もう、だめ。
これ以上、返事は延ばせない。
それに私自身も宝条博士から、彼から離れられない。
女として、科学者として、何を迷う必要があるんだろう・・。
こんなに必要とされているというのに。

ヴィンセント。
せっかく相談したのに、ろくに話を聞きもしないでやめろ、だなんて。
その上、博士のことを悪く言うなんて。
見損なったわ。
博士は決してそんな人じゃない。
だって、私にはこの上もなく優しい。
私だって、こんな気持ちになったのは初めてなのよ。
あなた、以外・・・。
でも、結局、あなたは任務が第一。
けれど、博士は違う。
いつも私の身体のことに気を使ってくれる。
私を第一に考えてくれる。

さよなら。
ヴィンセント。
私の初恋の人。
明日、私、博士にOKの返事をするわ。
だって、私のお腹にはもう博士の・・・。



−ヴィンセント−

どうすればいい。
オレのいない間に、すっかりルクレツィアは宝条のとりこだ。
なんてことだ!
宝条が本当に彼女を愛しているとは思えない。
あいつは、自分と自分の研究以外、興味のない奴なんだ。
何を企んでいる。
何のためにルクレツィアに近づいた。

だが、もうオレが何を言っても、彼女の心に届かない・・。
宝条のことを話そうとすると、ただの中傷としてしか聞いてくれない。
理由を話せれば、いや、それだけはできない。
できないんだ。
オレは、タークスだから・・。
任務に関わりのあることは、例え家族にさえも漏らしてはならない・・。
家族のいるメンバーはほとんどいないが・・。
しかし、このままでは・・・。
どうしたら、いい・・。



−ルクレツィア−

今日から、私は宝条博士の妻。
ふふふ。
なんだか、くすぐったい。
博士は、あ、もう、夫なんだからこれじゃ変ね。
彼はしばらくは、研究は休むようにって言ってくれた。
二人の子のために、無理はするな、って。
なんて優しいのかしら。
私、幸せだわ。
女として、これほどの幸せはないわ。

しばらく研究所を休むことを告げに出勤していったら
ヴィンセントに会った。
ヴィンセントはなんだか元気がなかったみたいだけど。
私の気のせいかしら。
こんなに幸せなのに、すごく心配そうな顔をして私を見ていた。
それとも、少しは私のこと、想ってくれていたのかしら。
ううん、今更、考えても仕方のないことね。
だって、私は、今こんなに幸せなんだもの。
元気に育ってね。
私たちの赤ちゃん。



−ヴィンセント−

今日からルクレツィアが研究所を休むらしい。
しかもその理由が産休だと?
くそっ!
もう、とうに手遅れだった訳だ。

今までどんなに非合法な任務だろうと
迷ったり悔やんだりしたことなどなかった。
こうしなければ生きてこられなかったのだから。
だが、今回だけは、オレはタークスであることを悔やんでいる。
ルクレツィアを、彼女を見送ることしかできない、自分を。

願うらくは、オレの思い過ごしであって欲しい。
ルクレツィアが信じているように宝条が、
本当に彼女のことを愛していると信じたい。
でなければ、オレの気持ちの行き場が、ない・・・。
せめて、幸せに。
ルクレツィア・・。

だが、どうしても奴の眼が気にかかる。
捕獲された獲物を見る時と同じ眼で
彼女を見つめている奴の眼が・・・。



−ルクレツィア−

お腹の子は順調のよう。
少し、成長が早いかしら。
ふふ、私と彼の愛情がたっぷりだものね。
ママは早くあなたに会いたいわ。
元気に育ってね。



−ヴィンセント−

これから長期の任務に入る。
しばらくはこちらに戻って来られないだろう。
半年か、一年か。
戻って来た時は、もうルクレツィアの子は生まれているだろうか。
もう、オレの手は必要ないらしい。
元気で、ルクレツィア。
どこにいても、君の無事だけを祈っている。



−ルクレツィア−

なんだか、気分が悪い。
このところ、ずっと。
ただの妊娠中毒症だと、医者でもある彼は言うけれど。
なんだか変だ。
まだ5ヶ月だというのに、こんなに大きくなるものなの?
でも、彼が言うんだからしょうがないわね。
彼は仕事が忙しいらしくて、なかなか帰ってこない。
ああ、気持ち悪い。
こういう時、傍にいて欲しいのに。
ダメね、最近、私、我がままになってるわ。



−ヴィンセント−

ここに潜入してから、もうすぐ半年になる。
毎日、偽装と捜査の連続だ。
一時も気を緩めることが出来ない。
だが、明日には応援が来てくれることになっている。
アジア系の新人ということだが、やり手らしい。
これで任務が少しでも楽になればいいんだが。

ルクレツィア、元気でいるだろうか。
君の消息を知る手立てが、今のオレには、ない。



−ルクレツィア−

いや!
どうして?
まだまだのはずよ。
他の人たちはまだ全然目立たないというのに。
どうして、私のあかちゃんだけ、こんなに大きいの?
そう言ったら、彼から外出を禁止されてしまった。
でも、もうそんなことどうでもいい。
ああ、お腹が痛い。
変だわ。
今までとは違う。
まさか・・・。
違うわ。
でも・・・。
うう、苦しい。
恐い・・・。
なんだか、恐ろしいものがこの中にいるような。
何?
これは・・。
ああ、あなた、早く来て・・・。



−ヴィンセント−

任務も一段落して、一安心だ。
やはり応援のツォンの働きが大きい。
彼との仕事は初めてだが、かなりできる。
ふ、こういう奴が将来、神羅を背負っていくんだろう。
オレは、オレはどうなるんだろうな・・。
最近、仕事に意欲を感じない。
いつからこうなってしまったのか・・。
以前は例え非情な仕事でも、それなりに意義を感じていたのに。

ルクレツィア、君が懐かしい。
だが、もう君にオレの手は届かない。
ただ、こうして無事を祈るだけだ。
ふん。
我ながら、女々しいな。



−ルクレツィア−

はあぁ。
う、生まれたの?
でも、どうして誰も知らせてくれないの?
私の赤ちゃん。
まだ、臨月も迎えてなかったから、
未熟児だったのかしら。
いいえ、そんなことないわね。
あんなに大きかったんだから。
会いたいわ。
私の赤ちゃんなのよ。
どこにいるの?



ああ、ここにいたのね。

!!!

な、なんなの・・・。
これ・・。
まだ、生まれたばかりのはずでしょう?
私がそんなに長く眠っていたの?
いいえ、そんなはずないわ。
第一、これは・・
これじゃ、新生児じゃない・・。
もう、生まれてから一月もたったような・・。
な、何故?
何が。

な・・・

私の・・

あかちゃん・・・。

あ、あああ。

あは、ははは!!!



−ヴィンセント−

長かった仕事も、やっと今日で終わりだ。
ツォンはもう一足先に本部に帰って報告を済ませている頃だな。
オレも事後処理が終われば帰れる。
帰る?
ふ、もう、待ってくれている人もいないというのに。

だが、ルクレツィア、ただその姿を見るだけでも
もうオレには許されないことなのだろうか・・。



−ルクレツィア−

おかしい。
このところ、記憶が途切れているみたい。
ふと、気が付くと全然知らないところにいたり。
何か、変よ。
そう、今も。
ここは、どこ?
病院?
いえ、研究所?
私、どうして?


ああ、そうよ。
私、赤ちゃん産んだんだわ。

赤ちゃん。

私のあかちゃん。

どこ?

どこにいるの?



−ヴィンセント−

おかしい。
ルクレツィアの姿がどこにも見えない。
家にも研究所にも。
研究所員に聞いてもまったくラチがあかない。
どうしたというんだ?
何かあったのか?
身重の身体だというのに・・・。

まただ。
悪い予感が、する。
しかも、今までになくタチが悪そうだ。
こういう予感は、必ず、当たる・・・。

ルクレツィア、無事でいてくれ!



−ルクレツィア−

セフィロス?

セフィ?

どこ?

あの人と私の赤ちゃん・・・。

かわいい、私の子・・・。


いいえ、こんなのは違うの・・。

私の子供はまだ、生まれたばかり。

だから、こんなに大きいはずはないの・・。


どこ?

どこにいるの?

ママは、ここよ・・・



−ヴィンセント−

なんてことだっ!

宝条は、あいつはルクレツィアに何をしたんだっ!
まだ、生まれるはずのない赤子が生まれ、
ルクレツィアはその現実に耐え切れず、
精神に異常をきたしているなんて・・・
しかも、その子供はもう一歳児並みの成長をしているだと?

!!!

あの眼!

そうか!
宝条は、ルクレツィアを実験材料に・・・!
なんて、なんて奴だ!
ケダモノ以下か、奴は・・・。

・・・・。

そんなことを言う資格があるのか、オレに。
あいつらの片棒を担いできたのは、誰だ。
タークスという名に隠れ、何人の犠牲を出してきた・・・。
ははは。
結局、自業自得という訳か。
今までやってきたことの、報いなのか?

これが!



−ルクレツィア−

ああ

セフィ・・

そんなところにいたの・・・

だめよ、そんなに走っては・・

ほら、ママが傍に行ってあげる

いつも、一緒よ

ね・・

私のセフィロス・・



−ヴィンセント−

ルクレツィアがいなくなった?
何故?
あんな身体で?
あんな状態の彼女をどうしてほっといたんだ?
くっ・・
宝条・・・・
実験の終わった材料は、もう必要ない・・んだな

もう、いい
もうタークスなんか関係ない・・
神羅が、何だというんだ・・
自分の一番守りたかったものも守れずに・・
生きていく意味があるというのか!

オレが犯してきた罪を忘れた訳じゃない・・
だが、
宝条・・・
おまえだけは・・

おまえだけは

許せない・・・!



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その後、ルクレツィアの復讐のため、宝条を襲撃したヴィンセントだったが、  
逆に捕らえられ、更には彼自身も人体実験の材料にされてしまった・・・。  

そして、神羅屋敷と呼ばれる家屋の地下深く、棺の中で眠り続ける・・・  

その眠りのもたらすものは、いったい何だったのだろう・・・  

ルクレツィアへの想い・犯した罪への悔恨・自分が生きていることの意味  


長い時が巡り、同じように運命の歯車に弄ばれる者たちによって目覚めさせられるまで  



・・・眠り続ける・・・






・・ To be continued FFZ ・・




以前、書いた「宝条博士のひそかな楽しみ」(北条じゃなくて・汗)の時に
不完全燃焼だったもので、ルクレツィアとヴィンセントの話を書いてみました。
最初は日記風にしようと思ってたんですが、後半、ルクレツィアが
日記を書ける状態じゃないんで、交互語りという形をとりました。
二人の関わりについては、少しはFFVIIの中で語られていましたが、
ほとんどわからない状態なので全部作者の創作みたいなもんです。
ですから、もし意義を唱える方がいらっしゃっても無視します。(いいんか・・?)

本当は、お互いに愛称とかで呼ばせ合いたかったんですが、
ルクレツィアの愛称?ヴィンセントの愛称?ルシーとか、ヴィンとか?
わっから〜ん!ということで、そのまま呼ばせています。(爆)

この作品は、切り番を踏んで頂いた侑史さんへキリリクとして捧げます。
いつもありがとうございます)


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