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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


<テーマノベル>
GRADUATION(卒業)【FFX】

−夢の終わりに−







 パシーーン




泡が弾けた

様々な夢模様

長き時を紡ぎ続けた 夢の世界

シャボンのように儚く

はじけて 消えていく・・・・・




  ***




気が付くと オレの腕は透け始めていた

その時の気持ち
何と言えばいいのか
覚悟はしていたつもりだった
だけど 現実を目の前に突きつけられた時


「・・・っ!」


  衝撃で息ができない

  声が 言葉が出ない

  足元が震える


『!』


目の前にユウナがいた

オレの透けていく手足を見てしまったのだろう
目が合った途端 ユウナは激しく首をふる
切羽詰った顔をして

オレは震える思いを飲み込んだ
他に何が言えただろう

「オレ 帰らなくちゃ」

ユウナは更に激しくその栗色の髪を揺らす
今にも泣き出しそうな顔

「ザナルカンド 案内できなくて
 ごめんな」

少しおどけた調子で 片手をあげて謝る

挫けそうな気持ちを抑えて
そうでも言わなけりゃ オレ 崩れてしまいそうだった

とっくに果たせないとわかってる約束

ユウナだってわかってる

だめだ これ以上ココにいられない

「じゃあな!」

思い切るように歩き出す

「おい!」

「また会えるんだよね?
 ねぇ!?」

ワッカの リュックの声が 追いすがる
戸惑っているのがありありとわかる声だ


  くっ…

  だけど

  もうすぐ オレ

  消えちまう

  そんなとこ

  みんなに 見せたくない!


「…っ」

「ユウナ!」

キマリの声がした

「ぇっ?」

オレが振り返った瞬間



「ぁっ」



ユウナが オレを すり抜けた……





  オレ…


  オレは もう


  ユウナを抱きとめてやることも


  できない





オレの気持ちを現わすかのように
幻光虫が足元から舞い上がる

そして
オレの腕と身体が 次第に薄くなっていく…



  いやだっ!

  消えたくなんかないっ!



「うっ ぅっ」



せっかくの強がりも無駄になる

とうとう オレは嗚咽を堪えられなかった





「ありがとう」


ふいに ユウナの声がした


オレは驚いてユウナを振り返る


ユウナはオレに背を向けたまま 立ち尽くしていた




  ありがとう……

  もっと いっぱい言いたいこと あるだろうに

  たった

  それだけ

  ユウナ…




オレは ユウナに近づき 背後からその身体を抱きしめる

もうほとんど透けて 自分自身でさえ存在感のない腕を

そっと

触れるか触れないかの 真綿のように包み込む




  これが オレの気持ちなんだ

  いつまでもこうやって

  傍に 寄り添っていたかった


  ユウナ…

  ユウナ

  ユウナ!


  残される者の気持ち

  オレはよく知ってる


  だけど…

  オレかユウナか どちらかしか選べないとしたら

  やっぱり オレ

  ユウナに生きていて欲しい

  生きて いつか


  本当の笑顔を……





万感の想いを込めて 目を瞑り

ユウナを ユウナの身体を 自分から


 ……すり抜ける……


  伝われ!


  オレの この想い!


  君に・・・


現実ではありえないはずの この瞬間に



そのまま歩いていく

だけど 後ろ髪を引かれる…

だめだ!

オレが迷っていたら ユウナはもっと…

オレは駆け出していた

飛空艇の淵に辿り着く

今度はためらわず 飛空艇の床を蹴った


思いっきり


空へ



飛んだ





  ***





雲の中?

それとも 異界への入り口?



ユウナのおやじさんが いた

穏やかな笑みを浮かべて



アーロンが いた

まるで お前も来たのかとでも言いたそうな顔で




そして


おやじが いた


今ならわかる

おやじの気持ち

おやじも分かってるよな

オレの気持ち

おやじが右手を差し出した


そうさ もう 言葉はいらない……


オレも手を差し出す



心が 触れ合う






  パシーーーーン












<テーマノベル>として「一緒にTALK」に投稿した作品です。

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