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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


寥 風(りょうふう)










ティーダ?


寝ちゃったの?

ふふ、今まで話、してたのにね


あ…


うん、そうやって、私の肩に寄りかかっててね

そしたら、寂しくないから




もうすぐだねぇ

もうすぐ「永遠のナギ節」迎えられるんだよね…

私たちが、作るんだよね

ほんの一時じゃない、永遠のナギ節

ずうっと続く平和



あー、なんか想像つかないや…

考えたこと……なかったし、ね

見る必要もなかった夢

希望を持つことも許されなかった、未来



そして、ね

きっと、いだくことはできないって思ってた、この気持ち

ドキドキして

ソワソワして

ウキウキして

それに、キュッって甘酸っぱい感じがして

胸が、締め付けられる

苦しいような、せつないような

キミを見てるだけで

ほら、こんな風に…




まつげ、思ったより長いんだね

髪の色より、ちょっと…濃い、かな?

いつも瞳の中ばかり見てたから、わからなかったよ

いつも…見てた

いつも……

いつも、見てたから…

わかっちゃった…

キミが…

この頃、とっても、辛そうにしてるのが…



そうだよね

ジェクトさんと戦わなくちゃならないんだもんね

辛い、に決まってるよね



だけど

だけど…ね


私には、わかるんだ

きっと、それだけじゃない

何か……隠してるよ、ね?


ザナルカンドから帰ってきてから

ううん

たぶん、ガガゼト山、越えた頃から、かな?

ザナルカンド着くまでは、私

自分のことで精一杯だったから、気がつかなかった

だけど、キミのことだけは見てたから

本当は、恐くて逃げ出したくなるのを

キミの瞳に励ましてもらってたから

キミの青空のように澄み切った瞳の中に

迷い、なのかな?

翳りみたいなものがね、見えた

きっと、他の人は気がつかなかったと思う

ずっと、キミを見てた私だけ



ううん

きっと、アーロンさんは気がついてた、よね

でもあの人はただ見守ってた

全部、知ってたんだもんね

お父さんやジェクトさんと旅をしてた時に

最後の選択、見てたんだから



辛かっただろうなあ

自分でどうすることもできないことって

…見てるしかできないことって

悲しい…よね



でも、だからこそ

私たちのために、ここにいてくれる



でも、ね

そのアーロンさんさえ、知らないこと

私、知ってるんだよ…



祈り子さまたちとの話

みんなで逢いに行ったこともあったけど


バハムートの祈り子さまとは

二人だけだった…



―― ねぇ!

―― あの時の話、なんのこと?

―― 消える・・・・・って!?


―― …誰……が?


―― ・・・っ。

―― 消えない! よね?

―― キミは、消えないよね!




…って、ホントは直接、キミに聞きたい…

ううん、聞きたく、ない……


だって、そのことを考えただけで、ほら

せっかく私の肩で気持ち良さそうに眠ってるキミを

起こしてしまいそうになるほど

震えだしてしまうんだ…




やめよう…

考えたく…ないや…



キミは、今、ここにいる

もうすぐ平和になるはずの、このスピラに

広い大空を駆け巡ってる、この飛空艇の上に

…わたしの…となりに…




ん〜っ、風が気持ちいいなぁ

でも、ちょっと寒くなってきたかな

だけど、ね

肩から、キミの温かさが伝わってくるんだ…


なんだろ?

不思議な気持ち

キミと一緒にいるだけで

心の中から、どんどんあったかいものが

溢れてくるんだよ



人を好きになるって

こういうこと、なのかな?

ふふ、なんだかくすぐったいよ




いつまでも…


こうして、二人でいられたら



いい…よね……














―― ごめん……な  ユウナ ――













○あとがき○

今作は、ユウナの独白ですね。
心の中でしゃべっているのか、眠っているはずのティーダに小さい声で語りかけているのか・・・。
でも、最後のティーダのセリフからすると・・・。

しかし、独白だけの作品って、字数が大変です(泣) やっと1200文字超えた(汗)

これは、FFXヴォーカルコレクションを聞いていて、浮かんできたお話です。
ちょうどあれも『シン』との決戦直前という設定でしたから、この話も同じ時期ですね。
きっと、決戦前日あたりに、こんな場面があったんじゃないかなー、と。
みんなが気を利かしていなくなって、二人っきりになった飛空艇の甲板の上。
他愛もない話をしていて、そのままうたた寝してしまったティーダ。
ユウナの肩に寄りかかり、普通ならただのものすごく幸せそうなカップルなんですけど・・・。
この後のことを考えると・・・(TT▽TT)ダァー


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