<テーマノベル> もしも、スピラに・・・があったら |
もしも、スピラに 自転車 があったら・・・ ある日、アルベドのシドからユウナへと送られた物。 太陽電池式の電動自転車『ベスピ』。 乗り方や使い方などを教えがてら、リュックが乗ってやってきた。 今まで見たこともないこの乗り物にビサイドの村は大騒ぎ! いや、大はしゃぎ、の方が正しい。 「んっとね。これがサドル、乗るところね。」 ひとつひとつ、各部の名前と用途をリュックが自慢げに解説する。 「で、これがペダル。普通はこれを足でこいで進むんだよ。」 送られたユウナはもちろん、みな物珍しげにリュックと自転車を交互に眺めている。 「坂とかー砂浜だとこぐのキツいから、そういう時はココのボタンを押すと・・・」 実際にリュックが乗ってボタンを押してみせると、自転車はスーッと前に進んだ。 「オオーーッ!」 まわりの観衆から感嘆の声が上がる。 「ネッ!楽でしょっ?おまけにおやじが改造して後ろのタイヤ太い二輪に変えてあるから、安定度、バツグンだよぉ。」 どうやらどこかの遺跡から見つけたものを、シドがユウナ仕様に改造したものらしい。 当のユウナはもちろん大喜びで、 「すっごーい!でも、いいのかな?ホントにもらっちゃって・・」 「あー、いいのいいの。オヤジ、これ見つけた時、ユウナんにプレゼントしてやれるってもんのすごい張り切っちゃってサァ〜」 リュックはその時のことを思い出したのか、片手をひらひら振りながらも、もう片方の手で口元から漏れる笑みを抑えている。 「うん。じゃあ、ありがたくいただくね。シドさんにとっても感謝してたって伝えて」 「は〜い。んじゃ、アタシ、忙しいからもう帰るね。あっ、故障したら遠慮なく言って。オヤジかアニキにすぐ直させるから〜」 ユウナの律儀なお辞儀に対して、リュックはうんうんと頷きながら慌しく帰っていった。 数日後。 ユウナが通りすがるたび、羨望の眼差しでみる村人たち。 もちろん、人々が自分も乗りたいとユウナに頼めばすぐにユウナは貸してやるのだろうが、やはりまだ機械というものに抵抗もあり、ただただ『いいなぁ、あれ・・』と羨ましそうに見ていることしかできない。 そんな中ルールーだけは一度だけだが、自転車に乗らせてもらっていた。 (この自転車はユウナ仕様のため、搭乗者は女性に限定されていた。・・・どんな仕様なんだ・・・) だが、その後二度と乗ろうとしない。 その訳をワッカが尋ねると 「この服では乗りにくい」だった。(確かに・・・) このところなんだか浮かない顔をしていたティーダだが、ユウナの前では平然としていたのでユウナはまったく気づいていない。 そして今もユウナの乗った自転車が、村の入り口のところにいたティーダの前を通りかかる。 ユウナは無邪気に片手を挙げて自転車の上から声をかける。 「ティーダっ、おはよっ!」 「うっス。」 元気のない返事にも気づかず、そのままユウナはティーダの前を通りすぎる。 それを見送り、いきなり両手を前に投げ出し、 「はあぁぁ〜〜」 としゃがみこむティーダ。 ボソッと誰にも聞こえないような声で、一言。 「オレ、サドルになりたいっす・・・」 <<すみません。終わりです。>> |