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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


一緒に・・・




ビサイドを見下ろす丘の上。

南国の強い陽射しを受けながら、ワッカは明るく萌える森を見つめている。
『シン』がいなくなり、スピラは平和になった。
それぞれが新しい目的に向かって歩き初めている。
以前は夢見ることさえ出来なかった未来を、当然のこととして受け入れられるようになった幸せを噛みしめながら。

だから。

     俺たちも留まってばかりじゃ、ダメだ
     新たな一歩を踏み出さなくちゃな
     なあ、ルー?

急な坂道を、明るい緑と青を背景にまるで影絵のような姿が登ってくる。
呼び出したのは自分のくせに、それを見とめた途端に心臓が跳ねる。
いつも近くにいる相手なのだが、今日はちょっと勝手が違う。
ワッカは今まで生きてきた中で何度目かの一大決心を、胸に秘めていた。
ここでぐらついてしまったら、せっかくの決意が無駄になってしまう。
ワッカは萎えそうになる気持ちを無理矢理奮い立たせながら、ルールーの到着を待っていた。

「こんなところにわざわざ呼び出して、いったい何の用?」

坂道の終点でもある約束の石碑に到着した早々、ルールーの冷言が飛ぶ。
だが、ワッカはルールーの方を見ようともしないで、腕組みのままビサイドの向こうに広がる海を見つめていた。いつもなら頭を掻きながら照れたように答えるワッカが、今日はまったく様子が違う。怪訝な顔でそれを眺めていたルールーだったが、次の言葉を待つ意味も込めてワッカの隣に並び、同じように眼下の景色に目をやる。

一呼吸、二呼吸の後、やっとワッカが口を開いた。


「ルー」


いつもの軽い口調では、ない。
真剣さがありありと伝わってくる。
ルールーは返事をせずに、顔だけワッカの方へと向けた。
ワッカはルールーが自分を見つめているのを充分に意識しながら、僅かにためらいつつ話を続ける。


「その ・ ・ ・  一緒になろう!」


ルールーは大きく目を見開く。


真意を測りかねたように凝視するルールーをそのままに、ワッカは訥々(とつとつ)と喋り始めた。



     ルー、見てみろよ
     今、スピラはこんなに平和になった
     俺たちが、そして、チャップが望んでた平和だ
     だけど、この平和は俺たちの力だけじゃねぇ
     チャップや他の多くの犠牲があったから、勝ち取れたもんだと俺は思ってる



そこで、初めてルールーは自分の気持ちを口にした。
静かに目を伏せながら・・・。


「・・・・・そうね」


ワッカも大きく頷きながら、ルールーの方へと身体の向きを変えた。



     だから、な
     チャップを忘れるんじゃなくて
     チャップの想いを繋げていこう
     二人で


     チャップの望んでたスピラで
     チャップの夢見てた未来を
     作っていきたいんだ

     俺たちで



再び開かれたルールーの双眸は、心なしか僅かに潤んでいるようだった。
しかしなんだか先を越されてしまったような少し悔しい気持ちも感じてしまったルールーは、ちょっとだけ意地悪く答える。


「あんたからそんなセリフを聞くなんて、ね」


せっかくの一世一代の告白をそんな風にいなされて、ワッカは思わず気色ばんだ声をあげる。


「ルー!オレは・・・!」


が、ワッカの怒鳴り声は途中で途切れてしまった。
ルールーがワッカの胸にもたれてきたから・・・。


「!」


ワッカの胸に顔を埋めて、くぐもったルールーの声がする。

「ごめん。・・・嬉しかった。ワッカ」

抱きしめ返してもいいのかと両手を右往左往させながら、ワッカがルールーの顔を覗き込みながら訊ねた。

「じ、じゃあ・・・!?」

ゆっくりと顔を上げて微笑むルールー。

それはヴェルベットのごとき大輪の薔薇もさもありなんというほどの艶やかさ・・・。

肯定の意味のその極上の笑みに天にも昇る心地のワッカは、思わずルールーを擁き上げ振り回す。


「ひゃっほーーー!」


2回、3回と振り回されたルールーも、今日ばかりは楽しげに笑い声をあげる。

「ふふふ、ワッカ。目が回るってば・・・」

「あ、わりぃ」

大して悪びれもせず、ワッカはそっとルールーを地面におろす。
そして、目も眩まんばかりの幸せを改めて胸に沁み込ませようと強くルールーを抱きしめるワッカ。


そのまま。


互いに見つめ合い、静かに顔が近づいていく。


黒薔薇の露に濡れる、少し開かれた唇に誘われるように。



朱と黒。



容貌も性格もみごとに相対する二人の、鮮やかに融け合う時・・・・








「一緒にTALK」に投稿した作品です。

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