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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


祈りのしずく  番外ギャグ編
<女の戦い/ユウナ、ブリッツボールに挑戦!>



「ぅわっ!」
「す、すげぇっ!!」
「い、痛そう〜っ」
「そこまで、するかぁ〜?!」
「むぅ!!!」

さっきから、うめき声やため息などなどひっきりなしにもらしているのは
かの大召喚士ユウナさまガードご一行である。
しかし、その編成はちょっと変だ。
ああ、そうだ。そこには男性だけで、女性の姿がないのである。


しかも一行がいる、ここルカスタジアムには、いつもならば超満員のはずの観客が
彼らと、数人の知り合いらしきこれも男性がいるだけで、他には誰もいない。
たった今、確かにスフィアプールの中でブリッツの試合が行われているのにである。
もちろん、スタジアムを運営するための技術員などは働いてはいるが、
純粋に試合を観戦しているのは、彼ら試合をしている選手の関係者のみであった。
選手の関係者?
なにか、変である。
そこにはティーダもワッカもいる。
なのに、関係者としてここにいるということは・・・。
スフィアプールの中では、誰が試合をしているというのか・・・?

そう、現在、ブリッツボールで戦っているのは、
ユウナたち女性陣だった。
もちろん、ルールーとリュックも。
シェリンダやドナまでいる。
あれは、チョコボ屋。
あなたも女性だったんですね。
おまけにルカのカフェの女店長までも。


「なあ、ワッカ。なんでワッカがカフェの女店長と知り合いだったんだ?」
「それはな、あの人が俺の最強最終武器を・・・・・」
          (ワッカさん・・ それはネタバレです)
「おっ? あ、っとぉ・・・・ まぁ なんだ とにかく、いい人なんだよ 気にすんなって!」
「ん〜〜?」

頭を掻き掻き、ごまかそうとするワッカに
なんだか不審そうなティーダだが、話が進まないので気にしないで先にいくことにする。


他にもマカラーニャ寺院の女官さんやら名前のよくわからない方までいらっしゃる。
ドナ・リュック・ルールーとの乱戦を切り抜けて、
たった今シュートを決めた一際見事な赤毛は、チョコボ騎兵隊のルチル隊長だ。


<ビーーッ>


そうすると当然エルマもいる訳で。
手を叩き合ってルチルのゴールを喜んでいる。

しかし、なんだか・・・・。
ものすごく全員のプレイがぎこちないような・・・。

そう、その女性たちは、全員ブリッツは素人なのである。
女性でもちゃんとブリッツの選手として活躍している人がいくらでもいるはず・・・。
なのに、何故?



事の起りはティーダがこのスピラに無事復活を果たした、あの時から少し後のこと。


エボン寺院からの使いと名乗る僧が、ユウナを訪ねてきたことから始まる。
その僧によると、スピラに永遠の平和をもたらしてくれたユウナに
寺院から何かしらの礼を尽くさなければという意見が出たらしい。
そして、普通ならば地位や名誉、又は、財宝などと言い出すところだったのを
(当然、ユウナの像は他の大召喚士同様、ただ今スピラの各地で建造中である)
今やエボンの中ではかなりの発言力を持つシェリンダが
「ユウナさまがそんなものをお望みになるはずがありません。」
と断言し、ならば直接ご本人に希望を聞いてみるのが一番ということになったのだそうだ。

「ふ〜ん そういうことっすか!」
オーラカメンバーとの練習を抜けて、急いで駆けつけてきたティーダが
ブリッツボールを指の上でクルクルと回しながら、ユウナに言った。
「この際だ ユウナ う〜〜んと贅沢なお願いしてみたら?」
「でも、私、これ以上望むものなんてないよ?」

スピラには平和が、そして自分にはティーダが。
そう物語っているユウナの眼と眼が合ってしまったティーダは、
思わずドギマギしてボールをとり落としてしまった。
『おいおい、おまえ、オーラカのエースだろ?』
なんてワッカの睨みもなんのその。
ラブラブモードに入ってしまった二人は、
他に人がいるのもお構いなく、お互い顔をチラチラと見つめあい、
真っ赤になりながら、モジモジ、ソワソワ・・・。
もう勝手にやってくれ!と言わんばかりに、全員がため息をつきつつ、そっぽをむいた。

とその時。

「あ、そうだ!」

ユウナが突然、悪戯っ子のように目を輝かせ、両手を胸の前で軽く叩いた。

「私、一度やってみたいこと あったんだ!」


ユウナのやってみたいこと。
ティーダの持っていたブリッツボールを見て思いついたこと。

『私も、ブリッツボールをやってみたい』

普通ならば、ブリッツをやりたければ、
ちゃんと練習してどこかのチームにスカウトしてもらえばいいのだが。
ユウナは、今や最後の大召喚士さま。時の人、である。
その注目度は、半端ではない。
しかも、少なくなったとはいえ、スピラにはまだまだモンスターがいる。
人々が不幸にも命を落として、そのまま魔物になってしまうという可能性も多々ある。
モンスター退治に異界送り。
他にも召喚士としてやらなけばならないことは、まだまだ山のようにあった。
それに、決してユウナはブリッツの選手になりたい訳ではないのだ。
ただ、いつも楽しそうにブリッツをやっているティーダたちを見て、
一度でいいから自分も思いっきりブリッツを、それも試合をしてみたいと思っていたのだ。

そう聞かされて、皆も納得した。
さすがに、大召喚士さまがあたりかまわずブリッツボールを蹴っているところなど、
一般の人々が見たら失神ものだろう。
その点、今回ならば他には絶対内緒でという条件付きで、
ルカスタジアムを借り切ることだって可能なはずだ。
莫大な費用がかかるだろうが。
なにしろ、何でも希望していいのだから。


この話に真っ先にのってきたのは、案の定、リュックだった。
「へぇ〜〜 おもしろそうじゃん!」
そして、また、とんでもない提案をしたのだ。
「そしたら、さ ユウナ
 あたしらみたいに、ブリッツやったことない女の子たち集めて、チーム作んない?」
たった一試合だけのチームだけどね、とやる気満々の様子だ。


以外だったのは、ルールーだった。
そんなことと、一笑されるかと思いきや、なんと
「面白そうじゃない 私ももちろん参加させてもらうわ」
と、のたまわれた。
そのセリフを聞いた時のワッカの顔といったら・・・。
「る、るーるー ・・・おまえ・・・」
          (名前がひらがなになってるし・・・・)
「なによ! 私がブリッツやっちゃおかしいっていうの ワッカ?」
「い、いえ 何 も 申しませんです はい」
          (身体がカチンコチンになっている・・ワッカ・・・)
「私もあんたやチャップが夢中になってたブリッツを、一度でいいからやってみたかったのよね」
と、悠然と笑うルールーの前に、ワッカは呆然と立ち尽くすしかなかったのは、言うまでも無い。


それからが又、大変だった。
寺院の方は、さほど問題なく了承してくれたのだが、
なまじ〔ブリッツをやったことがない女性〕という条件をつけたものだから
選手集めがなかなか進まない。
しかも、内密にという絶対条件が前提としてあるものだから、
選手集めに割り当てられた担当者の苦労は、余りあるものがあっただろう。
とにもかくにも、なんとか選手たちは集められ、いよいよ
【大召喚士ユウナさま感謝記念・ブリッツボール大会(但し、関係者以外絶対秘密よ!)】
が、開かれることになったのである。



<ビーーッ>


またまた、ゴールが決まった。
シュートしたのは、リュックだ。
しかし、どこをどう探しても、キーパーらしきものがいない。
実は、この試合に関してはルールが少々変更されていた。
本来なら、選手は敵味方合わせて12人いなければならないのだが、
人探しの限界で10人しか集められなかったのだ。
そこで、全員素人でもあることだし、キーパーは置かないで行うことになった。
シュートの成功確率がほとんど1桁というこのメンバーでは
キーパーがいようがいまいが、まったくと言っていいほど関係ない。
いや、むしろキーパーがいたのではかえって、点が入らず面白みが半減しそうだ。
リュックとルチルが、まあその中ではなんとかマシの方だった。
そのリュックがシュート3度目で、やっとゴール内にボールを入れられたのだった。



<ブーーーーー>

そして、ハーフタイム。



試合に出場すると決まってから、皆それぞれ練習らしきものをしてきていた。
リュックは、ホームの再建途中で忙しいアニキを拝み倒して、練習相手をさせたらしい。
ユウナはもちろんティーダに、そしてルールーはワッカに特訓を受けた。
ただし、ルールーはいちいちワッカにつっかかるので、ほとんど練習にならなかったと
ワッカが嘆いていた。
ユウナの特訓は、絶対人に見られないようにと深夜にしかできなかった。
誰もいない夜の浜辺での特訓は、若い二人には無法地帯で・・・・・・。
断っておくが、一般の人が誰もいないというだけで、
常にキマリは離れたところからユウナを見守っていた。
それも何だか可哀想な気もする二人だったが・・・。
浜の砂に足をとられてユウナが転べば、ティーダが駆け寄り、抱き起こす・・・。
うまくシュートを打てると二人で手を取り合って喜ぶのも束の間、
ジッとお互い時の経つのも忘れて見詰め合い、・・・・・。
てな具合で、アツアツ、ラブラブモードの二人は練習なんて結局うわの空で・・・。
本当に可哀想だったのは、きっとキマリだっただろう・・・。


さて、いよいよ後半戦が始まる。
前半の得点は、1対1の同点だ。

チーム編成は、ユウナチームが
ユウナ・ルールー・リュック・シェリンダ・カフェの女店長(名前不明)。

一方、当然と言わんばかりにチーム名をドナチームとした
ドナ・ルチル・エルマ・チョコボ屋・マカラーニャ女官(この辺も名前不明っす)。


ユウナたち3人とルチル・エルマ・ドナを含めた彼女たちは、
ブリッツこそやったことは無いものの、戦いには慣れていた。
無駄な動きこそ多いものの、モンスター相手に鍛えた身のこなしで
それなりにPLAYはできた。
問題なのは、完全な非戦闘員だったシェリンダたちで、
ボールに触ることもできずに右往左往しているだけだった。
おまけに同じチームのはずのドナとルチルが、
相性が悪いらしく仲間同士でボールを取り合っている。

『おまえではだめよ 私に寄越しなさい』
『先ほどのシュートを見ただろう 私のボールだ』

もし水の中でしゃべれるならば、こんな具合だろうか・・。
そのすぐ側では、シェリンダと女官が手を出せずオロオロしている。
そこへエルマが素早く入り込んで、ボールをカットする。

『もー、隊長、何やってんですかぁ?』

そう言わんばかりにルチルに目配せした後、
すまなそうな顔のルチルを横目にタイミング良くパスを出すエルマ。
うまい具合にパスが通り、ボールはチョコボ屋の手元に。
がしかし、チョコボの手綱以外ほとんど握ったことのない彼女はボールを取り落としてしまう。
そして、ボールは運良くゴール前にいたルールーの元へ。
勢いの弱ったボールを難なく拾ったルールーは、当然のようにシュート体勢に入る。
ベルトの重さと長いスカートが邪魔なため、普通より大きく足を振り上げるルールー。

  パシュッ!

見事な足さばきでシュートするルールーだったが、
ボールは僅かにはずれ、ゴールポストに弾かれる。


「あーっ! 惜しいっ! なっ! ワッカ、今の惜しかっ・・・? ワッカ?」
ユウナチームの応援に熱が入るティーダが、隣のワッカに同意を求めるように語りかけると、
そこにはルールーの悩殺シュートに石化したワッカが・・・。
「あっちゃ〜! あーもうっっ、これっくらいで石化なんかすんなよぉ、ワッカァ!」
しかたなく金の針をワッカに刺してやるティーダだった。

スフィアプールの外で起こっていることなど、まったく関係なく試合は進む。


ゴールポストに弾かれたボールは、なかなかボールの元に泳ぎつかない選手たちの中、
ほよほよと漂い、なんとシェリンダのところへ。

『え? あ  ぇっとぉ・・』

一応、ボールを手の中に収めたものの、
パスを投げてもいったいどこに飛んでいくかわからない。
きょろきょろとあたりを見回したシェリンダは、
一番近くにいたユウナのところへよたよたと泳いでいき、直接ボールを手渡した。

『はいっ!ユウナさま、お願いします、ね』

ぽよん、とボールを渡されたユウナ。
一瞬あっけにとられたが、すぐに我を取り戻した。
相手チームのメンバーは、まだ遠い。

この試合初めての、ユウナのシュートチャンスだった。
実はユウナは、ぜひこの試合でやってみたいことがあった。
『でも、絶対、失敗しそう・・・ 失敗したら、恥ずかしい・・・』
だが、見ているのは恋人であるティーダ(ポッ♪)と信頼おけるガード仲間、
それに他の人たちもかなり親しい人たちだけだ。
だからこそ、こんなに羽目を外して楽しめる。
今を逃したら、二度とこんなチャンスはないだろう。

『うんっ! 失敗してもいい やってみようっ!』

強い決意を秘め、それでも少しでも失敗しないようにと
ゴール近くへ泳いでいくユウナ。
あまりにゴールに近づいたものだから、さすがに相手のディフェンスが寄ってきた。
ほとんど役に立たない、チョコボ屋とマカラーニャ女官・・・。
『この人たちなら、大丈夫、かな?』
ユウナはシュートを・・・。

いや、シュートではない。

  ポショッ!

蹴られたボールは、ゆるゆるとチョコボ屋へと飛んでいく。
だが、案の定、チョコボ屋は勢いのないボールにさえ、ヘディング崩れで飛ばされる。
そして再び、とろとろとボールはユウナの元へ。
今度は、ユウナは思いっきりボールを叩いた。
痴話ゲンカでティーダの胸を叩く要領で・・・。

  パシャッ!


(その様子を見て一人、赤くなるティーダ・・)


ほろほろと彷徨ってきたボールを女官がお手玉してしまう。
はたまた、ほわわんと戻ってきたボールを前に

『よぉっし、やるぞぉっ!』

ユウナがゆっくりと回り始める。


「!!! ジェクトシュート!?」
ティーダを初め、そこにいた全員が息を飲む。


ヒラヒラと大きく裾を広げながら、ユウナがジェクトシュートを放った。

  ポスッ!

へなへなとボールはゴールへと流れていく。
ユウナがボールを蹴ったところから、ゴールまでほとんど距離はない。


<ビーーッ>


「やったっ! ユウナ、すげーなぁ! あれ、ジェクトシュートだ・ろ・・・? おい?」
石化から復活していたワッカが、感激のコブシを振り上げながらティーダを振り返ると、
ティーダが眼を押さえてふらついている。
「どうしたんだ?」
具合でも悪くなったのかと心配げにワッカが声をかけると
「ぁ? あ、わ、悪りぃ、ワッカ・・。 目薬と、ポーション、くんないか、な・・?」
上擦った声で返事を返したティーダだった。
「ぁあ〜? しょーがねー奴だな。 ったく、少しはキマリを見習えって!なぁっ!」
先ほどの自分のことは棚に上げ、ワッカはしたり顔でキマリの方を向く。
すると、なんだかキマリの様子もおかしい・・。
「・    ・    ・    ・ ・」
無口なのは同じだが、こちらを向こうとする動きが
ストップモーションのコマ送り状態になっている。
「・・・スロウかかったってか? はぁ〜。 キマリ、おまえもかよ・・・」

だらしのない男性陣、だった。



<ブーーーーー>


そこへ、試合終了のブザーが鳴った。

2対1で、ユウナチームの勝利。


スフィアプールの中では、いつもティーダやワッカがやっていたように、
ユウナたちが手を叩き合って喜んでいた。
果たす筈のなかった夢を実現できた喜びに、ユウナの顔は晴れやかに輝いていた。



普通ならば、話はここで終わるのだが、・・・・・後日談があったのである。



会場の外では、実はこの試合の模様が実況中継されていたのである!

本人たちは知らなかったのだが、なにしろ今をときめく大召喚士ユウナさまは、
若くてきれいな女の子である。
そんな彼女がスピラ中のアイドルとなっていたとしても、なんら不思議はない。
そして当然のようにアイドルには熱烈なファンが大勢いた。
ファンがいれば、中にはストーカーもどきもいるもので、
彼らはアイドルの情報に至極長けているのである。
だから、いくら内密にと事を進めていても、実際はほとんどバレバレだったのだ。
しかし、心やさしきスピラの人々は、
すべてをみんなが知っていると分かった時のユウナの気持ちを慮って、
逆に関係者各位にバレないように気を使っていたのだった。


ルカスタジアムでの試合がルカ中、いや、スピラ中にスフィア放送されていた。
どうやってとは、そこはそれ、蛇の道は蛇、そういう抜け道はいくらでもあるものである。

特にルカでは、試合をしているスタジアムがあるせいか、盛り上がり方も尋常ではなかった。

「あ、そこだ! ユウナさま、がんばれっ!」
「やれー、やっちまえー!リュックちゃ〜ん♪」
「ああ、ルールーさま。 僕もそのおみ足に蹴られたい・・・」
・・・
・・・・・・
どうもユウナのファンだけではないようだ・・・。


彼らは一様に隠しカメラで試合の模様を撮影しているカメラマンの腕に感謝していた。
特に肝心のシーンのズームアップの技量には、並々ならぬものがあったらしい。
あちらこちらに、ユウナやルールーの悩殺ポーズに出血して(早い話が鼻血)
血の海を作ってる輩が見受けられた。
・・・・・。(呆れてコメントを綴れない・・・)


スフィアモニターにくぎ付けになっている人々の傍らでは出店まで出ている。

「さあ、さあ、掘り出しもんだよ。ユウナさまのプロマイドはもちろん、
 ナマ写真もあるよ〜!さっき届いたばかりの超レア物だよー」

「こちらでは、今日の試合の映像スフィアの予約を受け付けてま〜す
 数に制限がありますので、お早めに〜!」

「ユウナクレープ、ユウナアイスはいか〜っすかぁ〜」

なんとも商魂たくましい人々である。

「ついでにガードのナマ写真もおいてあるよー
 ほら、買ってきな。貴重品だよっ!」
          ほんとに貴重品・・。


『シン』のいない日常の、ほんのひとコマ、であった・・・・。



様々な思惑がからんだものの、かくして
【大召喚士ユウナさま感謝記念・ブリッツボール大会(但し、関係者以外絶対秘密よ!)】
は、無事に終了した。

何事もなく。

表向きは。



ユウナたちは、この試合のために尽力してくれた人々に深く感謝し、
大満足でビサイドに戻ってきていた。



数日後、ビサイドの浜辺でティーダと二人っきりの<でえと>の時のことである。
楽しげに試合のことを語るユウナを、これまた幸せそうに見つめるティーダ。
そこへ、トコトコと顔なじみの幼い女の子が近寄ってきた。
ふと、その子がユウナにもの問いたげな様子なのに気が付き、声をかけるユウナ。

「ん? どうしたの?」

「あのね、あのね。ユウナしゃま、わたちにもね、ジェクトチュートおちえて?」


その瞬間、ユウナは真っ赤になり、次に、真っ青になった。


ジェクトシュートは、ティーダにさえも秘密にして練習していたのに。
だから、人前でユウナが放ったジェクトシュートはあの試合の一回だけ。
と、いうこと、は・・・。


すぐにユウナの状態に気付いたティーダが必死で掛ける声も、まったくユウナの耳には入らない。
ガタガタと振るえながら自分の身体を抱きつつ、ユウナは全身で叫んでいた。



「!!!いやぁぁぁーーーーーーーーーーっっっ!!!!!」




その声は遠くキーリカまで届いたという噂がたったが、定かではない。





END



おまけ

その後、ユウナが恥ずかしさのあまり、『天岩戸』よろしく
数週間、自分の部屋から出ようとしなかったのは、いわずもがなだったかもしれない。


テオ
2001年10月26日(金) 23時07分55秒 公開
■この作品の著作権はテオにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
(なんか、最後の女の子、可哀想。いや、ユウナもそうなんだけどさ・・・)

いかがだったでしょうか?
本編とは打って変わったギャグタッチでお送りしました。前半は淡々と進んでいくんですが、後半、笑って頂けたでしょうか?
もし、笑って頂けたのでしたら、ぜひご感想などお待ちしております。


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