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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


祈りのしずく 【FFX After Ending Story】 Side 8 (最終話)

〜〜 ユウナ 心の旅 〜〜





Side 8  【 邂  逅 】








光が見える


だけど それは あまりにも遠くて・・・


小さな光のかけらは あちこちに見えている

でも 違う

そうじゃない

俺が行きたいのは あの光の元だけ・・・

泳いでも 泳いでも なかなか辿りつかない・・・

何故?

俺がいる この海・・・

暖かく ゆるやかな まるで夢の中のような・・・

きっと この光のすべてが出口なんだろう

夢の出口

だけど きっと本当の俺の出口は あそこだけなんだ

ずっと 聞こえてる 俺を呼ぶ音が

だから 俺は あの光のところまで行くんだ

だって 約束したから・・・


・・必ず飛んでいくよって・・





〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜





      次第にあたりが白み始めていた。
      夜が明けようとしている。
      夜更け過ぎから、指笛を吹いていたユウナの指も唇も
      もう痺れて感覚が無い。
      それでも、最後の力を振り絞るようにユウナは指笛を吹き続けた。

      彼が、すぐそこまで来ている、そんな気がしてならない。

      近くにいるような、でも、すごく遠いような
      そんな感覚がいつもユウナには、あった。
      そういう状態をどうすればいいのか。
      誰も教えてはくれない。
      だから、思い切って行動にでたのだ。

      かつて、語ってくれた、召喚獣の祈り子たちの言葉に従って・・



         彼は、夢

         でも、真実に触れた、夢

         夢の終わりを越えて、真実になれる、夢



      朝陽が遥か彼方の水平線に、わずかに姿を現わした。
      薄白く靄のかかったようだった、明け方の海が、
      朝焼けに赤く染まったのも束の間、徐々にその色を取り戻し始める。
      神々しい幾つもの光の束が、波と戯れながら、
      金と蒼の絨毯を織り成し、ユウナの方へと近づいてくる。

      その余りにも美しい光景に引き寄せられるように、
      ユウナはいつのまにか白い飛沫に足を踏み入れていた。



         会いたい

         信じてる

         きっと、会えるって信じてる

         信じてる・・・



      その想いゆえ。

      草の芽色の瞳から。 煌く海色の瞳から。

      どうしても堪えきれずに溢れ、こぼれおちる、ひとしずくの光のかけら。

      ユウナ自身が封印していたはずの、想いの結晶。



       祈りの、涙



      それが、ユウナの足元の波に攫われたのは、
      朝の太陽の光がユウナに最初に届いたのとほぼ同時。




       その瞬間




      ユウナが足を踏み入れていたあたりの海が眩しく輝いた。

      あまりの眩しさに、思わずユウナは眼をとじてしまう。

      ほんのしばらくして、再び、眼を開けると、
      あたりの輝きは消え、いつのまにか元に戻っていた。

      いつもの穏やかなビサイドの海に。

      『いったい何が起こったの・・・?』

      急いで浜辺に戻り、不安げにあたりを見渡すユウナ。




       ザッザザザッ!



      ユウナが先ほどいた場所あたりに、
      大きな水音とともに、人影が浮かび上がった。



      「!!!」



      衝動的に口元を白い小さい手で抑えるユウナ。


      忘れもしない、見事なプラチナブロンド。

      濡れてわずかに茶色がかった、金糸が跳ねる。

      それよりも、まるで朝陽のように輝くその笑顔。


      瞳の奥が熱くなっていく・・・


      そして・・・


      その人影が片手を大きく振った。




       「ユウナ!!」




      声が耳に届く前に、ユウナは駆け出していた。

      愛しい人の、その名を叫びながら。



       「・・ティーーダーッ・・・」



      わずかなその距離を、文字通りティーダの胸に飛び込んでいくユウナ。


       「ティーダ、ティーダ、ティーダ・・・・・」


      若者の厚い胸にやさしく抱きとめられながら、

      ユウナは自分に課していた、戒めを、解く。



          必ず会えるから、きっと会えるから
          だから、泣かない
          会えたら、呼ぶの
          キミの名を
          それまでは、泣かない
          それまでは、呼ばない

          決して・・・



      胸の中で堰を切ったように自分の名を呼びながら泣きじゃくる少女を
      やわらかく抱きしめながら、ティーダは告げる。



       「・・遅くなって、・・ゴメン・・・・」



      その声を聞いて、やっとユウナはティーダの胸に埋めていた顔を上げた。

      泣き濡れたその面差しは、さながら朝露に濡れた華のよう・・。

      それまでの反動なのか、湧き出る泉のように涙を流し続けながらも

      艶やかな薔薇のようにユウナは笑う。



       「・・うん・」



          遅いよ
          遅すぎるよ
          待ってたんだよ
          でも、信じてた

          信じて・・・

          待ってたんだよ・・



        言いたい言葉は、数えきれないほどあるけれど、今は何も言えない。

        言いたくない。

        ただ、確かにここにある、この暖かい胸の中で・・・・

        こうして、いたい・・だけ・・・・


      そして、ユウナがもっとよく見えるようにとティーダの顔に手を伸ばした時、
      ティーダは、ふと何かに気付いたようにその手を取った。

      一晩中、指笛を吹いていたせいで、赤く腫れ上がったようになっている二本の指。

      はっと気が付いて、ユウナは急いで手を引っ込めようとするが、
      その指の意味を知ったティーダは、それを許さなかった。


      そして、少し痛ましげにユウナの顔を見つめた後・・・・




       そっとその手に口付ける。




      さざめく波間に映った二人のシルエットを、潮風が甘やかに乱していった。







      その様子を、遠く浜辺の奥から見守っていた幾つかの影が
      頃合を見計らったように近づいてきた。

      賑やかな掛け声とともに・・・。









夢を真実に変えるもの


それは、真摯な想い


夢を夢として受け入れ、それでもなお、求め続ける強い願い


夢の終わりを乗り越えた、真実のひとしずく








・・・・・そして 新たな物語が始まる・・・・・







〜 〜 〜 F I N 〜 〜 〜






テオ
2001年10月25日(木) 10時54分39秒 公開
■この作品の著作権はテオにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ

終わりました。いかがだったでしょう?やはり、ティーダは復活してしまいました。(笑)
作者は大のティーダファンなので当然の結果なんですけど、それにしても、ティーダの出番が少な過ぎですねぇ。(苦笑)
復活したシーンのモデルは、アルティマニアの表紙のアレです。なので最後は、無理矢理、太陽を速く昇らせました。(爆) 
まぁ、こんなもんです、内情なんて・・。

最後まで読んで下さった方々、本当にありがとうございました。
心理描写ばかりのテンポの悪い話で、最後まで書けるのか度々不安になりました。
実際、作者としては消化不良の面も否めませんが、いずれ書き足したいと思ってます。

最後にあたり、ここまでずっと読んで下さっていればお解りの方もいると思いますが、ちょっとネタばらしを。
この話は、シン突入直前に行くと聞ける各召喚獣の言葉が、骨組みになっています。各章の冒頭句がそうです。もう一つ、副題になっている心の旅。要するにユウナの心理描写で話が進んでいくということです。この最終話に向けて、ユウナの心理状態をいかに高めていくか、というのがカギです。シンに触れて現実となったジェクトのように、ティーダを現実にするためにはシンに対抗し得るほどに精錬され凝縮された精神が必要だと思ったからです。(ジェクト・シンに触れたはずのティーダが何故現実化してなかったのかは、未だ謎ですが・・)現スピラでは、それが可能なのはユウナ一人のはずです。召喚士としても、彼を必要としている人間としても。その想いを凝縮させたものが一滴の涙だった、という設定です。それから、この章で解説していますが、ユウナの涙とティーダの名前。これらはユウナの精神状態を高めるために、封印させました。1〜7話まで「涙」と「ティーダ」の記述が一つもなかったことにお気づきでしたでしょうか?

新作を、と言いたいところなんですが、実は本編を書いてる間に書き溜めていたものがありまして。(この話が心理描写ばかりなもので、ストレス発散の手段として書いてました・・)
今回の話からしばらく後の話なので、別の作品として出してもいいんですが、書いた時期が同じなので、やはり番外編として載せたいと思ってます。作風は全くの別物で、完全にギャグです。ティユウのラブラブもほんの少しばかり・・。


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