祈りのしずく 【FFX After Ending Story】
Side 7 |
〜〜 ユウナ 心の旅 〜〜 Side 7 【 潜 心 】 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ そなたは はかない夢なれど・・・ スピラの真実に触れた夢・・・ スピラは真実を忘れない・・・ 真実を救った者を忘れない・・・ 走りつづける ひたむきな夢よ・・・ 夢の終わりを越えて 真実となれ・・・ ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ビサイドの海。 ユウナは一人、浜辺に膝を抱いて座り込んでいた。 ザナルカンド(正確にはガガゼト山山頂だが)から飛空艇に戻って来たユウナは、 その吹っ切れたような表情とは裏腹に憔悴しきっていた。 飛空艇に乗り込むと同時に倒れるように昏々と眠るユウナを見守りながら、 シドとガードたちの意見は一致していた。 すぐにユウナをビサイドに連れて帰る。 今のユウナを心身共に癒せる場所は、あの穏やかな村しかないはずだと。 そして、丸一昼夜眠り続けたユウナは、ビサイドの自分の部屋で目覚めたのだった。 心配する仲間たちに、もうすこしだけ自分の思うようにさせてくれるよう、 半ば強引に納得させ、日も暮れようとしているこの浜辺に来ていた。 夕暮れの名残り陽が波間に朱く交差して、昼とは違った優しい姿を見せている。 かすかに茜色に染まったその髪を、少し湿った爽やかな潮風がくすぐっていく。 足元に打ち寄せる波音が耳に優しく歌いかける。 繰り返し寄せては返る、ユウナの想いのように・・・。 ユウナは、この海からきた人のことを想う。 その時のことは、ワッカから何度も聞いた。 ワッカにとってもよほど衝撃的な出来事だったのだろう。 幾重もの意味で。 ユウナが初めて彼の人を見たのは、ビサイド寺院だった。 召喚士としての初めての試練を乗り越えた、忘れられないあの日。 見慣れた自分の仲間たちの中に、彼はいた。 日の射さぬ薄暗い寺院の中にあってなお、 彼のそのみごとな金髪は一際ユウナの目を惹いた。 慣れぬ祈りのため疲れきったその身体に、 一瞬、今までに感じたことのない衝動を覚えた。 甘い、痺れにも似た・・・。 でも、とユウナは想う。 『ほんとうは、ここで最初に会いたかったな・・』 ビサイドの陽差しは強い。 その光を受けて、海はいつも藍い宝石を散りばめたようにキラめいている。 そこに現れた、太陽の人。 陽の光を浴びて、金糸の髪が揺れる度。 こぼれるような笑顔を向けられる度。 明るい声がユウナの耳をくすぐる度に・・・。 ユウナがどんなに慰められ、癒され、 そして、ときめいていたか。 『きっと、キミは知らなかったよ、ね・・』 決して長いとはいえない、一緒にいた時間。 けれど、こんなにも鮮やかにその存在を刻み付けた・・・。 陽はいつの間にか落ち、宵闇があたりを包み込んでいた。 ユウナは時の経つのも忘れ、ただひたすらもの想う。 自分が究極召喚によって命を落とすだろうことは、なんでもなかった。 最初から覚悟していたことだから。 スピラを救うためには何でもできると思っていた。 『でも、こんなのって・・・』 スピラを救い、ユウナをも死なせない方法をリュックと共に 必死で考えてくれていた。 もちろん、他の仲間も口には出さずとも同じ思いだったのだろう。 そして、不可能だとユウナ自身も信じていたその運命を みごとに覆したのだった。 その代償としてどういう結果を招くのか、最後のその時が来るまで誰にも告げずに。 薄々は気が付いていた。 何かを隠していると。 でも、自分と違い、覚悟の素振りも見せないその明るさに 最後まで翻弄されつづけたユウナ。 「でも、今度は私の番、だよ・・・」 ユウナが守りたかったもの。 スピラ。 スピラに生きている人々。 そして、ユウナにとっては、彼もその一人。 今では絶対欠かせない、一人。 「キミがいないと 私の物語は続かないんだよ」 それにね・・・とユウナは語りかけるように微笑った。 「・・私って、欲張りなんだ・・・」 ピィ―――――――――−−−−ッ キミはウソつきじゃ、ないよね ピィ――――――――――――−−−−ッ 私、信じてる・・・ ピィィィ――――――――――――−−−−−−−−ッ その夜、指笛の音がビサイドの海に響き渡っていた。 悲しげな、しかし力強いその音色は、明け方まで止むことはなかった。 To be continued. <<冒頭:“ようじんぼう”>> |
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