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〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


祈りのしずく 【FFX After Ending Story】 Side 3

〜〜 ユウナ 心の旅 〜〜





Side 3  【 回  顧 】






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すべての『シン』は呪い願うの・・・・・


我が身を呪って 消えたいと願うの・・・・・


みずからの滅びを夢見て


『シン』は 私たちを見守っている


荒ぶる『シン』に残された


かの時代の かすかな思い・・・・・


エボン=ジュから解放してあげて・・・・・


『シン』となった祈り子を・・・・・





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ザナルカンドへと向かう飛空艇の中。

シドは最初は驚いていたものの、
ユウナの頼みを快く引き受けてくれた。

ただし、新しいホームを建設できそうな場所探しも
兼ねてという条件付きではあったが。

本来ならザナルカンドへの道のりは、
ユウナたち自身の足で歩いて
それぞれの街や寺院を巡りながら行くべきなのだろう。
スピラ中の人々が、永遠のナギ節をもたらしてくれた
この若く美しい召喚士の訪れを切望しているのだから。
だが、ユウナは一刻も早くザナルカンドの地に行きたいのと同時に
ゆっくりと考える時間が欲しかった。
地上にいたのでは、どうしても雑音に乱されてしまう。
いつも人に囲まれ、一人になれることは皆無に等しい。
今やユウナは”時の人”なのだから、それはしかたのないことだった。
その点飛空艇ならば、シド以下アルベド族の人たちと
ユウナたちだけだ。
アルベド族とはほとんど会話が成立しないし、
なにより、シドとリュックが睨みを利かせている。
ユウナはあらためて、この頼りになる伯父といとこに感謝していた。
混乱している頭を整理し、
じっくりと思考を巡らすには最適の環境と言えた。


多少の摩擦はあったものの、飛空艇が無事離陸してすぐ、
ユウナは甲板に上がって行った。

ユウナにとって、今では一番忘れられなくなってしまった場所。

と同時に、一番、辛い、場所。


彼の姿を最後に見たところ。


彼が最後のウソをついた・・・


船の舳先を我知らず見つめていたユウナの目元が、
いつのまにか熱くなってしまっていた。


「・・・!」

ユウナは、キッと思い切るように顔を上げた。

そして今度は、あたりの空へと眼を向ける。


『シン』のいない空。

青く澄んだ平和な、空。

そして、その空の下には、
穏やかに波打ち広がる、紺碧の海。

これこそが、ユウナが、いや、
スピラに生きとし生けるものすべてが望んでいたもの。


  解らないことはいっぱいある。
  一つ一つ考えていこう。



     『シン』



エボンでは、『シン』は人が償わなくてはならない罪の現れだと教えていた。
今ではそれがエボンが真実を歪めて伝えていたのだということを
ユウナは知っている。
むしろ、この世界は『シン』によって守られていたのかもしれない。
『シン』がいることで、スピラが消滅することはなかった。
確かに多くの犠牲はあった。
が、もしも最初から『シン』がいなかったなら・・・。


そう考えると、ユウナは背すじに冷たいものが走るのを感じた。


以前は、『シン』さえいなければと思っていた。
『エボン=ジュ』の存在を知らなかったのだから。
もし、『シン』がいなかったら、
『エボン=ジュ』は、どんな暴走をしたのか、わからないだろう。
もっと別の、もしかしたら『シン』よりもひどい厄災に見舞われていたかもしれない。

『シン』という安楽の場所を手に入れて、
『エボン=ジュ』は静かに夢を見続けられた。
究極召喚獣となり、『シン』となってしまった人たちの犠牲によって。

人としての意識が完全に『シン』を抑えていられる期間。
そう、それこそが本当の意味での、ナギ節。
しかし、人としての姿を失いし彼らは、徐々に意識が薄らいでいくのも自然の道理。
それでも、かすかな記憶が残っている間は、『エボン=ジュ』からの支配に
抵抗し続けたのだろう。ジェクトのように。

我知らず細いその両の手で、自分自身をかき抱きながらユウナは呟く。


「つらかった、よね・・・」


幾陣かの風が、ユウナの言葉に答えるかのように
やさしく吹き抜けていった。







To be continued.




<<冒頭:“ヴァルファーレ”>>



■作者からのメッセージ
3話めです。なんか心理描写ばっかりで、全然面白くないっすね・・・・(自業自得)
一応、事前に組み立てたプロットに沿って書いてるんですけど、なかなか進まないです(泣)
テーマの一つである召還獣たちの言葉を組み入れて話を作ってるもんで、思うように書けないです。

次回からはもう少し動きが出ると思います。他のメンバーたちも出てくるし。
中身が今いちなんで、背景にちょこっと凝ってみました。飛空艇の甲板から見る空のイメージです。いかがでしょう?

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