It's Battle! | ||
「さあっ、今日も頑張って行くっスよ〜!」 「うんっ! あ、待って、ティーダ!」 ティーダがルンルンと鼻歌でも聞えてきそうなほど軽い足取りで、先頭を切って歩いていく。それを、ユウナが置いていかれまいと懸命に小走りでついて行った。 彼らを見送りながら、しかしこちらはのんびりと歩いている残されたガード衆。それでもキマリだけは、二人から離されない程度に歩調を速めてはいたが。 そんな中、一人だけ怪訝な顔をしたワッカがポロリと呟いた。 「おい、この頃なんかやけにあいつ張り切ってないか?」 すると、すぐ隣を歩いていたリュックが即座に応えてきた。 「ん? あ〜、あのね〜」 「お、リュック知ってんのか?」 「うん、この間自慢そうに自分から話してたんだよ」 「へぇ、んで何だって?」 我が意を得たりとばかりに、勢い込んでまくしたて始めるリュック。どうやら話したくて仕方なかったらしい……。 「あのね、なんか最近新しい技覚えたんだって。それもスッゴイやつ。ここんとこ、レベル上げするんだ〜って頑張ってたじゃん?(プレイヤーが)」 「あ〜、そういや、やけに戦闘回数多かったような気もしてたが…そうだったのか?」 「もー、ワッカってば鈍過ぎ! めちゃくちゃ多かったじゃん! バトル!」 そこへ、スッと黒い姿が割って入って、一言のもとに切って捨てた。 「この人にそういうことを言っても無駄ね」 「お、おい、ルー! 何もそこまで言わなくても…」 途端、情けない顏になるワッカ。 「あら…。じゃあ、いつもちゃんと考えながら戦ってるって言える?」 意地悪い流し目に、 「うっ…、それは……」 当然、ワッカは言葉につまる。 「ほら、みなさい。あんたっていつも行き当たりばったりなんだから。もう少し…」 「もーー! アタシが今、話してんのっ! 痴話喧嘩なら後でやってよー」 「ぶっ! りゅっリュックっ!!」 「痴話げ…! べっ別に私たちは…」 リュックの見事な夫婦喧嘩の仲裁(?)に、たちどころに口を紡ぐ二人。 「はいはい、わかったから。話、続けるよ?」 「お、おう…」 「………」 しどろもどろにオレンジ頭を掻くワッカに、頬染めてソッポ向いているルールー。 いつものことだと、二人に構わずリュックは話を継いだ。 「でね、覚えたばかりのその技早く試したくて、うずうずしてるんだよ。もう子供じゃないんだから、しょーがないよねぇ」 一番年下のリュックに言われてりゃ、立場ないぞティーダ。 「無駄口はそれくらいにしておけ。先に行くぞ」 最後尾を悠々と歩いていたアーロンに追い越されながらそう言われ、いつのまにか止まっていた足を三人は慌てて再び動かし始めたのだった。 しばらくすると、彼らの少しばかり前方にいたキマリが突然駆け出した。 「魔物だ!」 既に戦闘態勢に入っていたティーダとユウナに、キマリが合流する。 しかし、残りのガードたちはまったく急ぐ気配もない。 さすがにワッカが心配になり、ルールーに訊いた。 「おいおい、俺たちも駆けつけなくていいのか?」 「いいんじゃない? いざとなった時で」 ルールーは平然と言ってのける。 「でもなぁ」 「へーきだよ。ほら、見なよ。もんのすごく楽しそうに戦ってるし〜」 今度はリュックにもそう言われて、まだそこそこ離れてはいたが3人の戦闘する様をワッカが眺めてみると、なるほど、ティーダ一人がやたらと攻撃を繰り返している。それも生き生きとして確かに楽しそうでもある。 バトル開始! 「一気に決めてくぞ」ガシッ! 「ほれっ」ドサッ 「終わりっ」ドサドサ〜ッ あっという間に、戦闘は終わっていた。 「余裕ッス!」 ………しかも、ティーダの掛け声しか聞えてこない。 だが、バトルの熱気を感じ取ったのか、仲間の血の気配に興奮したのか、魔物たちがわらわらと集まってきていた。 しかし、まったく動じていないらしいティーダは、まだまだやる気満々のようだ。 「お、もう次が来たッスか? んじゃあ続けて、いっちゃうぞぉ」 バトル二連戦。 「はっ」ドカッ 「とどめ」バタッ 「決まったっ」バタバタ〜ッ またもや、すぐに戦闘終了。 「楽勝ッスね」 一緒に戦っているはずの、ユウナとキマリの出番さえない。 「ティーダ……すごいね、その技」 ユウナが心底、感心している。 「・・・・・・・」 キマリは言葉もなく、立ち尽くすばかり。相変わらず、無表情。 「そーだろ? クイックトリックってんだけどさ、すっげぇオレにピッタリの技なんだよな」 もともと素早いティーダに、攻撃間隔が極端に短くなるクイックトリックを連発させたら、魔物はおろか仲間たちでさえ攻撃チャンスはなかなか巡ってこない………。しかも、ほとんど一撃で倒している。 しかし、そんなこととは露知らず、魔物たちは性懲りもなく集まってくる。 「あれ? また来たのか。やめときゃいいのに。今のオレに敵うはずないって!」 続けて、三戦目〜。 「速攻で終わりだ」ガキッ 「はっ」グシャッ しかし、今度は前の二連戦とは少々勝手が違った。雑魚モンスターとはいえ、中には素早いものもいる。 「グアァッ!」 「あっ」 戦闘中だというのに、ティーダの勇士に見惚れていたのか(は?)ぼうっと突っ立っていたユウナへと攻撃してきた。 「ユウナっ!」 思わず攻撃を止め、ユウナのもとへ駆け寄るティーダ。 「あ……へ、平気。大丈夫だよ」 幸い、ユウナはたいした痛手は受けずに済んだようだった。 だが、この程度のバトルならば早々にキリをつける自信のあったティーダは、自分の攻撃をかいくぐって仕掛けてきたモンスターに、やつ当たり気味にむかっ腹たてて気を吐いた。 「にゃろ〜! もー頭来た! よーっし、もうあやまっても遅ぇからな! てめぇ、みじん切りだっ!」 「ティ、ティーダ……」 ユウナが、思わずモンスターに同情の念を感じてしまったほど……。 「とっておきを見せてやるっ」 ドカバキバリッグシャ〜ッッ!! 派手なオーバードライブで締めくくったティーダは、へへん、と倒れ伏して幻光虫化し始めた魔物どもを見渡して得意げに言い放った。 「ヌルいっつーの」 そして、ユウナを振り返り、 「どーッスか?」 ニッと笑った彼の顏は、あくまでも爽やかで…。 「う……うん。すごい……ね」(って言うより、ひどい…) バトルと言えないほどの一方的な有り様に、ユウナだけでなく他のガードの面々も呆れ果てていた。 最後のティーダの大技の余波の影響か、集まってきていた魔物たちも散り散りとなり、とりあえず戦闘状態は終わった。 ほとんど呆気に取られて見ていただけの他の仲間たちとも合流し、またザナルカンド目指して歩き始めた一行。 皆の後からのそのそと歩いていたワッカが、どうしても納得の行かない顏で一人愚痴る。 「しかしなぁ、いくら新技だっつってもアイツのあの強さは何なんだよ……」 と、そこへ、またもや耳ざとく訊きつけたリュックが、ツツツと傍に寄ってきた。 「しょーがないじゃん。アイツってさ、アタシらの倍近いレベルなんだもん」 「うげっ! なっなんだよ、それはっ?」 思惑通り仰天してくれたワッカの間抜け面に満足して、したり顔でウンチクを垂れるリュック。 「あの技ってさ、かなりレベル上がんないと取得できないんだよね〜」 「あー、まー、そりゃそーなんだろうがな……」 まだ納得いかないワッカ。胡散臭そうに眉を顰めている。 「だってよ、バトルに参加してりゃ、みんな同じようにレベル上がるんだろうが」 「ううん、だって、アタシたちは入れ代わりで戦ってるけど、アイツだけはずっと出ずっぱりだもん。だから他のみんなの倍くらいは経験値もらってるんじゃないかなぁ」 「・・・・・・・・・・・・・・」 あ、あれぇ? な…なんか、あたりから……不穏な雰囲気…が……? と、響いてくるのは、伝説のガードの低い声。 「そうか、プレイヤーの…いや、作者の陰謀か…」 ドキッ! ………や、やばくなってきたので、そそくさと<<強制終了!>> 「あっ! おいっ! 待ちやがれっ!」 ワッカの慌てた声がする。 ・・・・でも、待たないし。作者権限で、終わっちゃうし。 だから〜終わりっ♪ | ||
○あとがき○ |