MENU / BACK
〜 FF NOVEL <FFX> 〜
by テオ


最後の"出番"を待つ男 【FFX・アーロン】


「ぅ・ぅぅ・・・ぅあっ! ・・っ!!」


ザナルカンドが近づくにつれ、アーロンはこんな風にうなされて
夜中に目覚めることが多くなっていた。
ここは、ザナルカンドを眼下に臨む霊峰ガガゼトの中腹。
数々の戦いをくぐり抜けてきた一行は、ここで一夜を明かしていた。
もう、町も村も無い、辺境の地。
もちろん宿など有りはしない。
それでも疲れ果てた若者たちは、泥のように眠り込んでいる。
皆とは少し離れたところで休んでいたために、
誰もアーロンの声に気づかなかった。
はずだった・・。
ただ一人、キマリを除いては。

アーロンの一番近くで横になっているワッカの向こうで
腕組みをしながら座ったままの姿勢で、閉じていたはずの両の眼を薄く開け、
こちらを見ているキマリと目が合う。
しかし、キマリは何事もなかったかのように、静かに又、眼を閉じた。

何も言わずとも解ってくれる仲間がいることの心地よさを感じながら、
アーロンは仲間を起こしてしまわぬように、そっとその場を離れた。

ゆっくりと歩きながら、アーロンはさっきのうなされる原因となった夢のことに思いを馳せた。
いやにリアルな夢だった。
ザナルカンドが近づくにつれ、そのリアルさが増しているようだ。
一番思い出したくない、しかし、決して忘れることの出来ない、残酷な過去・・・。
スピラ中に存在する幻光虫の密度が、ここは半端ではない。
たぶんそのせいなのだろう。
それとも1000年もの間、死の螺旋を築き続ける元凶に
目前まで迫っているからなのか。


あれから10年。
やっと戻ってきた。
決して短くはないその年月。
あの時の決意のために。
捨てきれない思いのために。
そして、かけがえのない2つの友情と信頼のために。
自分は戻ってきた。
友は許してくれるだろうか・・。
思いが溢れそうになる。
もう少し、だ。
待っていてくれ、と。


  俺たちが信じた、希望の光。
  迷い傷つきながらも、次第に真実へと近づき、着実に成長している。
  誰もが真実がゆえに逃れられなかった過酷な罠に、
  彼らが陥らぬよう見守り導くのが、俺の役目。
  そして、真実を乗り越えて行って欲しい。

  果たしてその時、俺は正しい道を示唆してやれるのだろうか。
  俺たちの、俺の思いを押し付ける訳には、いかない。
  絶対に!
  俺たちの物語は、もう10年前のあの時に終わってしまった。
  これはあいつらの物語だ。


山腹に作られた道の端まで歩き、アーロンは足下に広がるザナルカンドを見下ろした。
幻光虫をその身にまとい、永遠ともいえる時の流れの中、存在し続ける遺跡。
夜明け前の薄暗がりの中、遺跡全体がその存在を誇示するかのように浮かび上がって見える。

いくつかの幻光虫が例のごとく、アーロンの身体にまとわりつく。
だが、いつものような嫌悪感は感じない。
やさしくいたわるように、漂い、流れていく。

アーロンはさらに思いを辿る。


  終わってしまった物語も、その物語を、それに関わった者たちの思いを、
  伝えられなくては、そのまま消え去ってしまう。
  何も生まない。
  何も活かされない。
  教訓になることさえ、出来ない。
  そういう存在が今まで無かったが為に、
  スピラの悪しき死の螺旋は続いていくしかなかった。
  それを断ち切るために、俺がいる。
  俺たちの物語を、引き継ぐべき者たちに伝え、それを乗り越えさせるために。
  それが。
  親であった者たちの願い。
  そして、友を救えなかった俺の願い。


「あと、少し、だな。」

と、その時、アーロンにははっきりと聞こえた。


『な〜に弱気なこと言ってんだぁ? アーロン。 元はといえば、おめーが言ったんじゃねーか!』


はっ!
と、思わずあたりを見回すアーロンだった、が、
そこには先刻と変わらず幻光虫が舞っているだけだった。

「・・・・、ふっ。」

微かに自嘲の笑みを口元に浮かべ、アーロンはひとりごちた。

「そういえば、そうだったな。・・・・。」


あたりが次第に薄闇からシルバーグレイへと様変わりを始めている。
アーロンは片方しか開かぬ瞳を薄く見開き、夜と朝(あした)の狭間を見つめる。


  そろそろ夜明けだ。
  夜が明ければ、いよいよこの旅の目的地、ザナルカンドへ出発だ。
  偽りと真実の舞台へと。



     俺たちの無限の可能性たちと共に・・・・・・・。



            <<<終>>>
2001年10月11日(木) 17時22分42秒 公開
■この作品の著作権はテオにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
タイトルを見て、『あれ?』と思われた方がいると思います。
そうです。このタイトルはアルティマニアのパクリです。
全く同じだとまずいのでちょこっとだけ変えましたが・・・。あははは。(笑ってごまかす)
だって、イメージがちょうどピッタリだったもんで・・。
この話は、FF10のAfter Endingのストーリーを考え中につい書いてしまった、まだストーリー中の旅の一幕です。
なんで、アーロン?と自分でも不思議なんですが(私はティーダの激烈ファン!)、
まあ、できちゃったもんはしょうがないんで、載せてみました。(ひどい言い方・・)
でも、アーロンももちろん好きですけどね。



BACK