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〜 FF NOVEL <FFX-2> 〜
by テオ


黄金(きん)色のとき





 キミが戻ってきてくれてから、初めて二人っきりで迎えた夜。

 それまでは、ワッカさん始めビサイドのみんなに囲まれっぱなしだったもんね。
 うん、でも気持ちはよくわかるんだ。
 みんな、同じなんだよね。
 私だけじゃない。
 みんな、キミが帰ってくることを信じて待ってた。
 だから、仕方ないことなんだって諦めてたんだけど…。

 それでも、やっぱり早く二人になりたかったよ。
 今まで我慢してた分、少しくらいわがままになったっていいよね?


「ユウナ…」

 キミの透きとおる水の瞳がほんの少し細められて、ふわりとした微笑みとともに顔が近づいてくる。
 この時を心の底から待ってたはずなのに、私は胸のドキドキがキミに聞こえてしまうんじゃないかって、もう不安いっぱいで、ギュウっと強く瞼を閉じた。身体もものすごく硬くこわばってる…。

―― き・緊張するっス。

 初めてじゃないのに、どうしてかな? ホントに、ものすごく緊張したんだ。

「………?」

 でも、いつまで待っても私の唇に触れてくるはずの感触がない……。


「プッ! あはっはははは・・・」

 いきなりキミの吹き出した笑い声が聞こえて、私はびっくりして目を見開く。
 目の前の金色の髪が、本当ならそこにあるはずの顔を前かがみに隠して小刻みに揺れている。
「え? ど・どうしたの?」
 何がどうしたのかさっぱり分からない私に、笑いながらの苦しげな息の中、キミはこう答えた。
「ははっは・・。くっくく・・。だ、だって、ユウナ、そんなにガチガチになっちゃってさ・・・」
 やっと顔を上げたキミは、もう可笑しくて仕方ないって感じで。
 涙まで浮かべて笑ってるなんて!

「…ぇ…。……もうっ! ひどいっ!」

―― 人が緊張してるのを笑うなんてっ!
―― しかも、こんな時に!
―― ひどい、ひどいよ。

 すっかり頭にきた私は、プイと頬を膨らませてキミに背を向けた。
 やだな、私まで涙でてきちゃった。

―― こんなはずじゃなかったのに…

 なんだか悲しくなってきちゃったよ。


 そうしたら……。


 首筋にふっとかかるキミの息。
 そぉっと後ろからキミの両腕がまわされる。


 背中が ―――― あたたかい。


―― ……ぁ……


 背中が ―――― あたたかい…。


―― ………うん……うん、うん…


 ジンと瞳の奥が熱くなるほど。


 …あたたかい。


 あたたかいんだよ。


 ……キミが……。


 目線を落とすと、私の胸の上で組まれたキミの腕。
 恐る恐る私も手を持ちあげて、その腕につかまってみる。

 ギュッと。

 肩にかかるキミの腕の重さと、この手に掴んだ確かな手ごたえ。
 胸の奥が、言いようもない安堵の思いで満たされる。

 耳元で小さく、キミの震える声が聞こえた。

「ごめん。」

 顔が見えなくても、どんな表情してるのか、わかるよ…。

「…うん。」

 私の声も震えてる。
 だけど、あの時みたいに悲しいからじゃない。

 嬉しくて。

 嬉しくて。

 嬉しくて。

 瞳を濡らしてあふれそうな涙も、とっても熱くて。


―― そうなんだね
―― あの時の、つらい想い出を…
―― こうやって消してくれようとしてるんだね


 私のうなじにかかるキミの熱い息が、いつの間にかキミの唇に変わってた。

―― あつい…

 そこから身体中が溶けていってしまいそうなほど。
 堪えきれずに閉じた瞳から、浮かんでいた涙がポロポロと零れ落ちて、重ねたキミの腕と私の手にかかる。
 もう涙混じりじゃない、キミのしっかりした声が、私の髪の中から聞こえる。

「ユウナ、俺、もう絶対消えないから。」

               ―――― 絶対、絶対にだよ?

「うん。」


「もうずっと傍にいるから。」

               ―――― 私もこの手を離さない…

「うん。」


「ずっと一緒に……いてくれるよな?」

               ―――― ………それって…

「………うん!」


 世界中に、たった二人だけしかいないって思えた時。
 黄昏に空が真っ赤に燃えて、私たちの気持ちを映してくれている。

 そして、太陽がさざめく海へと最後の黄金(きん)の光を投げかけた時。


 ティーダは、私をひときわ強く抱きしめてくれた。






           ――― これが、キミから私への、 求 愛 (プロポーズ) ―――






○あとがき○
さて、今作は6万ヒット記念のイベント作品です。(5万の時に自粛したので、その代わり(^^ゞ)
3部作になってまして、これがその1作目になります。短いです。すみません。(笑)でも1600弱(^^ゞ
一応、ED後の二人のアツアツ・ラヴラヴを書こうとは・・・しています。あまり成功してないかもしれませんが。。。(汗)

タイトルにも明記してますが、ティーダ復活後の話ですので、FFX・FFX−2どちらのED後として読んでいただいても大丈夫かと思います。

ユウナの1人語り。
いかがだったでしょ?(短すぎて物足りないかな〜? でも、まだ後が続くし…)


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