|
|
二通の手紙・後編(FF8・ED後)
バラムガーデンの印章が入った事務用封筒の中身は、エルオーネの予想を良い意味で裏切ってくれた。 封を切り、装飾も色もついてない筈の便箋を取り出そうとしたら、鮮やかな青い紙を手にしていたので彼女は目をみはった。 角をきちんと合わせて折られた便箋を広げてみると、やや右上がりの角ばった字が書かれていた。一字一字、丁寧に記されているのが見て取れる。手書きなどを期待してはいなかった。てっきり印字だろうとたかを括っていたのに、再度びっくりである。 そして、二度あることは三度あった。三度目は、手紙の内容であった。
手紙はちゃんと着いた、有難う。 敬語を使うのでは筆が進まないので、失礼にあたるかもしれないが取っ払ってもいいだろうか。 貰った手紙にあった通り、先方の了承抜きで好きに出来る点で、手紙はとても都合がいいようだ。 単刀直入に本題に入りたい。バラムガーデンに来ないか? 遊びに来るんじゃなくて、こっちに住まないかということだ。 皆にはまだ話してないが、きっと歓迎するだろう。 というのも、おねえちゃんがもう苦労することはない、おねえちゃんだって幸せにならなければならないからだ。 せっかくの平和も味わえず、今後も利用されっ放しになるなんて、俺が許さない。 辛かったら、すぐにでも来て欲しい。 おねえちゃんの能力ではなくて、おねえちゃん自身を好いている人達が、ちゃんといるのだから。
ラグナも、勿論その一人なんだろう。ただ、一応は一国の大統領だ、身軽なわけじゃないもんな。 多忙でおねえちゃんを守りきれないのも責めたりはしないが、あいつがおねえちゃんをエスタに縛りつけようというなら話は別だ。 俺がエスタへ迎えに行っても構わない。ともかく、考えてみてくれ。
ここまで書きそびれてしまったが、俺も皆も元気でやっている。 じゃあ、また。
短い分量だがスコールにとっては努力を振り絞らねばならなかっただろう。SeeDの報告書や筆記試験以外に、彼が書き物をする機会はどう考えてもなさそうだ。 自分のことを考えに考えてくれて、挙句考えが突っ走ってしまっている熱血溢れるこの手紙を、エルオーネは嬉しくて何度も読み返した。 これで何回目かしらと、胸が踊る拍子に合わせて数え上げてみる。鼓動に追いつく筈もないのに、焦って記憶を探り出す。 バルコニーでそんな作業にいそしむエルオーネの元に、幾分強い潮風が到来した。手にする紙が、かさこそと音を立て夢見がちな彼女を囃(はや)していく。 彼女は青い贈り物が潮風に飛ばされ、海に溶けてしまわぬよう、両手で握り締め離さずにいた。 心配してくれて、ありがとう。
「うぉ〜い、エル」
でも、大丈夫。
「どうだ? いい所だろ。執務おっぽり出して来た甲斐があるってもんだよな」
エスタの大統領は、そんじょそこらのお方じゃないのよ。さすがは、貴方のお父さん。
「青きバラムホテル、か。一度来たことあるんだけどよ、変わんねーなー」
私が何か言い出すより早く、一個人の、“ラグナ”に戻って。貴方に会いに行こうって、私の腕を引っ張って。
「いきなり突撃したら、あの仏頂面がどう変わんのやら……想像しただけでイイ、イイよな!」 ずっと大人しく大統領の椅子におさまってる人ではなくて。自分の夢に他人を、わたしを、ぐいぐい引っ張って。
「……どうした? エル」
「ううん。早くスコールに会いに行こう。びっくりするよ、きっと」
「おお、そうだよな! いざ、バラムガーデンへ!」 面と向かってこれから伝えに行くね。 わたしは大丈夫、わたし、幸せよ。 おじちゃんに、縛られてはいない。むしろ自ら望んで囚われているのだから、と。
風に泳ぐショールを掻き合わせ、エルオーネは振り向いた。 いまにも扉を打ち破ろうとうずうずとしているラグナに、追いすがって行く為に。
Copyright (c) 2002 にじます
|
|
|