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〜 【Relational Novel】 〜

【Relay●MoonLignt Baby】

第四話 〜未来へ〜あの素晴らしい言葉をもう一度








月明かりでキラキラ眩しい砂浜。
一つの影が降りてくる。それは段々とはっきり、大きくなってきた。
飛空艇―ハイウィンド
白いその船からフラついた足取りで降りてきた女性、いや、少女?
小さい赤ん坊を抱いて―――――

「ぅぷ・・はあ は・・・・やっとついた・・・・・・・・・」

こんな姿をみているのは、黒い夜空に描かれた星々と月だけだ。
その月が再び飛び上がった巨大な飛空挺で見えなくなった。


「この子がいれば・・あいつもね・・・」








【Relay●MoonLight Baby】 第四話  


〜未来へ〜 あの素晴らしい言葉をもう一度  


[FFVII ED after]









 コンコン


この忙しい時にきた客に、多少不満を感じながらも、家についてから一時間経っても泣き止まない赤ん坊をソファに寝かせ、客人を迎える。ちなみに一時間ずっと赤ん坊を抱き続けている。

ドアを開けるとそこには見慣れた男。


「あ、ヴィンセント。どうしたのこんな夜中にレディの家に。」

黒い長髪、黒いマント、赤く鋭い瞳、長い爪、腰元に携えた長銃。
子供に『死に神を書いてごらん』といったらこんな人物になるだろう。
そんな彼―ヴィンセント=ヴァレンタインが白いドアを開けて入ってくるのは似合わない気もする。


「・・この前家にきたときマテリア忘れていっただろう?」


そういって差し出す手には赤いマテリアが二つ。こんな見かけでも人を家に招くらしい。
もしかしたら出迎えた女性―ユフィ=キサラギが勝手に押しかけたのかもしれないが。

「ああ!ないないと思っていたら!!」

「・・それでよくマテリアハンターが名乗れるな・・・・」

半ば呆れている様子。

マテリアハンター。世界には魔法、その他特殊な能力を発動させる力をもつ物質―マテリアがある。それを探す者たちを『マテリアハンター』と呼ぶ。
マテリアを探す理由は金だったり、コレクション目的だったり、人様々だ。
そんな者たちにとっては、マテリアを忘れるなど息子をドブ沼に沈めるようなものだ。
この職は人数が多いため、生半可な考えでは勤まらないのだ。

小さく舌を出しながらも話題を変えようと頭を働かせる。悪知恵には自信がある。

「ねえ!ちょっと来て!」

「??なんだ?」




言われるままに手を引かれ居間へと急ぐ。
途中何度か転びそうになったが、彼のプライドがそれをさせない。無理な体勢になっても堪えた。

「! こ この赤子はどうしたのだ!」

ソファの上で泣き疲れたのか、眠っている赤ん坊。無理もない、ユフィの出産なんて聞いていない。
もしかしたら忘れているだけかもしれないが、そんなことはあるわけがない。

「ん?クラウドとティファが連れてたんだけど、二人の子供じゃないみたいだから借りてきちゃった。」


そっと持ち上げながらケロっと言ってのける。
『借りてきた』という言い方は正しくないが・・・多分一般的には『盗んできた』と言うのだろう。


「バカ!今すぐ二人に返して来い!」

冷静そうな見た目からは想像できない怒鳴り声だ。


「ええ〜〜こんなに可愛いのにどうして!!」

「赤ん坊はおもちゃじゃないのだぞ!!なにかあったらどうする気だ!!」

「ちゃんと面倒みるよ!」

『ああ言えばこう言う』。そんな言葉があるのはご存知だろうか?


「ぇ・・・・ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


あまりにも大声で言い争うものだから、赤ん坊が泣き出してしまった。甲高い声が急に聞こえ、ユフィも小さく悲鳴。
騒音被害が出ないか心配だ。


「あ、ごめんごめん。よしよしよし・・・・・」

ゆりかごのようにブランブランと揺らすが、一向に泣き止まず。
そのうちユフィが泣きたくなってしまった。

「うう・・・・ヴィンセント変わって!」

「なんで私が・・・・」

「はやく!」

仕方なく受け取ったヴィンセント。
『ユフィを怒らせてはいけない』旅中に学んだことの一つ。
彼女がリミットブレイクしたらどんな技を繰り出すか、十分知っている。

軽く揺さぶりながらあやす。ユフィのそれより落着いた感じだ。
なんとか静まった。と思ったら次の問題が二人を待ち受けていた。


「!!?こら!危ないぞ!!」

なんと赤ちゃんが彼の腰元の銃―デスペナルティに手を伸ばしたのだ。
デスペナルティをがっちり掴んだ指を解く。『がっちり』といってもそれ程強く握っていないが、下手すると細い指を折ってしまいそうだ。

「ダメだよ〜〜〜そんなに乱暴に引き離しちゃ。」


優しくいっているがユフィも内心ハラハラだった。ユフィはその銃の威力を十分知っている。

「っっ!ユフィ!なんとかしろ!」

「あははは。いいじゃん楽しそうだし。」

と言いつつ、ユフィはヴィンセントから赤ん坊を受け取る。

「ぁ〜〜ん〜〜〜〜〜」

ユフィに抱かれながらも手を伸ばそうと身を乗り出している。ユフィは赤子の腹を抱え、自分のほうへと引き寄せる。
他人からみたらなんとも可愛らしいその仕種も、彼にとってはいい迷惑だ。

「まったく、とんでもない子供だな・・・・・・」


腑に落ちない様子。
ユフィは彼にばれないように隠し笑いを浮かべていた。

「はははははは。よっぽどそれが気に入ったんだね。」


今度はヴィンセントが彼女にばれないように溜息。
赤子は手は銃を目指しながらも、顔はヴィンセントの方に向けている。

「どうやって連れてきたんだ?」

「ん?シドに頼んだんだ。」

ケロっとさらっと簡潔に説明。まあそれ以上説明のしようがないのだが。

「シドが?珍しいな。」

シドも暇ではない、日夜もっと大空高く、宇宙を目指して頑張っている。『熱血船長』の愛称はふさわしい。

「ん〜〜〜〜〜そこはgive&takeってことで。」


(マテリアで釣ったな・・・・・)

とヴィンセントは確信していた。呆れて短い溜息。
欲しい時は何が何でも手に入れるくせに、いらない時はきっぱり捨てるのだ。

「ま!いいじゃん!細かいこと気にしてると血圧上がるよ!」


「血圧のことはともかく、これ以上聞いても無駄だろう。」彼は長年の経験からそう悟った。

「名前は?」

「え?」

何のこと?と聞きかえす。

「この赤ん坊の名前だ。」

「え?な、なまえ?え〜〜と・・・・・」

名前、そういえば知らない。と今ごろ気付くユフィ。

「う〜〜ん。ん〜〜?小龍!うん!小龍にしよう!」

「・・・・・・・・・・・・」

「小龍♪小龍♪」

ヴィンセントは小龍(しょうりゅう)、もといその赤子が、家を出ようとすると泣き出すため、ユフィの家に泊まることになった。

(本当に気に入られたのだな・・・・・)

嬉しい反面悲しいヴィンセントだった。


             


                  *




夜も深まり、月も高く上がった。
隣から、もしかしたら一つくらい先かもしれないが、小龍の泣き声が聞こえなくなり、やっと眠れる。と安心し、夢の世界へと向かったときだった。
自慢ではないが彼は寝つきはいい方だ。寝起きは悪いが・・・・

視覚も聴覚も奪われたような・・・ただ脳裏に記憶のみが浮かぶ。
そんな不思議な空間。
思い出したくないおぞましき記憶。




『私は反対だ!!』


             『あいつはお前を利用しようと――――』



『セフィロスは!?私のかわいいセフィロスは!!』


            『宝条!ルクレツィアになにを・・・』


『ジェノバ細胞・・・・セフィロス・・・・ガスト博士・・古代種・・・』



 『私と宝条の息子』


『セフィロスは・・・・・死んでしまったよ・・・ルクレツィア・・・・・』


 
             『ヴィンセント・・・・・あなたは―――――』


     

              『ふん。バカな女だ』


  『お前にも実験サンプルになってもらうよ』





『セフィロスは!?私のかわいいセフィロスは!!』





                   *




蒲団から腰をあげ、乱れた髪を直す。
「夢のことは忘れよう。」そう考えた。
壁掛け時計を見ると細い長針が『2』を、太い短針が『7』を指している。

ヴィンセントは寝ぼけ眼を擦りながら居間に向かうと、ユフィがお茶を運んできたところだった、物音か何かで来るとわかったのだろう。


「せっかくだから朝ご飯食べていけば?」

「うむ・・・・・そうさせてもらう。」


ちなみに彼は朝、赤ん坊の泣き声で起きることになった。
20数年も暗い棺桶の中で眠り続けた彼が、赤子の泣き声ごときで目覚めたのだ。
いくら気に入らなくても、赤子相手に銃を抜くわけにはいかない。
その直後、彼に手裏剣―ユフィ自慢の不倶戴天が飛んでくるだろう。

和風の部屋に置かれたダイニングテーブルに腰かけ、イスの足のすぐ横に小龍を寝かせる。


「はいどうぞ。熱いから気をつけてね。」

「おまえ料理できるのだな・・・・・・」

意外、と顔に出ている。だが彼のリアクションも意外だ。

「あったり前でしょ!皆と会うまで一人で旅してたんだから!」

一流料亭、とまではいかないが、そこそこのレストランで出せるくらいの品は出来ている。
あくまでも本人談で。

この土地ウータイの文化は独特で、他にはない郷土料理がある。
白米にワカメと豆腐の味噌汁、キュウリとナスがウータイ地方独特の漬け方で出されている。
ただ一つ周りの雰囲気から外れたカレーピラフだけが気になるが。

「あ、それ昨日の残り。」


『食べ物を粗末にしない』というのも旅の途中の教訓だろう。
カレーピラフと白米。米が二品も出ている。


「この赤ん坊は。」

「小龍。」

「・・・・・・・・小龍はなにを食べるのだ?」


わざわざ訂正するユフィ。
よほど小龍という名前が気に入ったのだろう。
だが、確かに自分の息子やら娘を『この赤ん坊』などと呼ばれたら腹ただしいのも事実。
ユフィの場合は息子でも孫でもなんでもないが。


「へへへへへへへ・・・・・・・・」

「?なんだ?」

不気味に笑うユフィに、彼は戸惑う。


「なんかこうしてると新婚さんみたいだね♪」

「!!?」


味の薄いカレーピラフを喉につまらせる。
次の瞬間3度ほど咳き込んで水を喉に流し込む。
しかしそれはお茶だったらしく、再び咳き込む。
湯飲みに注いである時点でお茶と気付くべきだが、その時の彼にはそんな余裕は無い。


「う〜〜〜ん。でも子供は2人欲しいな〜〜♪」

「・・・・その前に結婚だろう?」

ゲホゲホと喉を抑えるヴィンセント。


「あたしの結婚式ってどんなのなのかな。」

「・・・・和風にするのだろ?」

「そうだよね!綺麗な着物きたいな♪」

一応彼女も結婚を夢見る純粋な乙女だ。
マテリアハンターだろうが世界を救った英雄だろうが女は女だ。


「・・・・似合いそうだな・・・・・・・・・」


言葉はそこで消えた。
わずかに頬を赤らめながらもヴィンセントのほうを見やる。普段となんら変わりなくキュウリの漬け物に手をつけていた。無表情で、何を考えているのかわからない。
漬け物は薄くきってあるのが透けていてよくわかる。

「・・・からかったな・・・・・・」

「なんだ?」

特に悪びた様子も無い。
「もしかしたら本心かも。」とユフィはちょっとだけ思った。


「別に〜〜〜〜〜〜〜〜」








さんさんと照りつける太陽。
暖かい。というよりは暑すぎる。
そんな中、普段どおり忍者とは思えない格好のユフィとやたらと着込んでいるヴィンセント。
ユフィは赤子を抱いていたが。

「やっぱり小龍もお外がいいよね♪」

その顔を覗き込む。真ん丸の目で見つめ返された。

「・・・何も答えないではないか。なぜ聞く必要がある?」

「う〜〜ん。安心できるのかな?」

赤ん坊を抱き直しながら答える。
ヴィンセントはユフィと反対方向を向きながらじっと空を見つめている。
まばらに雲が見える、一番綺麗な空だ。
雲がないとそっけないし、雲が多いと何となく心が沈むものだ。

「答えは返ってこなくても、話し掛けられる、心から好きって思える人が近くにいる、それって嬉しいと思わない?」

「・・・?・・・??」

やはり暑いらしく、首筋に汗を流している。
もうそろそろ他の地域では上着を必要とする時期だが、ウータイの気候は年中夏日和。

「旅の時もね。もうすぐ死ぬかもしれない!っていうのに、すごくホッと出来たんだ。モンスターと会って死にそうになっても、戦闘が終わると皆が笑っててくれる。」

それと同じだよ、と付け加える。

「・・・私にはわからない。」

「わからなくたっていいよ。」

ユフィは急に走り出した。
置いていかれそうになったヴィンセントも歩き出す。

「あたしが教えてあげるから・・ね。」

「???・・・・」

「ほら!なんか言いなさいよ!」

照れ隠しか普段より強い口調。
頬がほんのり赤いのは暑さのせいではない。

「え?ああ。悪いな・・・・」

「な、なんで謝るのさ・・・」

数秒の沈黙。
赤ん坊の人差し指が伸びる。
その先は二人、いや三人の目的地であった。ウータイにそびえ立つダチャオ像。話に集中していたせいか、全く気がつかなかった。

この町の人は、何かお祝いがあるとここにお祈りに向かう習慣があった。
そのことを家を出る直前に教わったヴィンセント。


「祝い事なんてあるのか?」

出てきたモンスター。名前を思い出す前にデスペナルティで撃ち抜く。額を正確に、素早く。
ユフィも反射的に不倶戴天を構えたが、仕方なくしまう。赤子を抱いたまま使うのはあまりにも危険だ。

「この子が無事に育ってくださいっていうお願いにきたの。」

「・・・・育てる気か?やはり。」

答えはわかっている。しかし聞かなければならない。それだけ重要なことなのだ。

「・・最後に一つだけ言っておく・・・・・クラウドたちのセリフを借りるが・・・・・」

深い溜息。長い髪が風でなびく。
彼の顔には『一度言ってみたかった』と書いてある。


「おまえの乗ろうとしている列車は途中下車はできないぞ?」

「う・・うう・・・・・・ん・・・・・」

はっきりしない答えだな・・・・・
やっぱり子供だな・・・と、感想をのべる彼。


「クラウドとティファに預けたままじゃ!二人の邪魔になるでしょ♪」

「・・・・・・ふ・・・」

「ああ!なに!今のバカにした笑い!!」


ヴィンセントはダチャオ像の目を、鋭く赤い瞳で見つめる。
向こうの目は褐色だ。

「・・・・・ヴィンセントは・・こういうの嫌?」

話が自分にかかってきたので一瞬戸惑いながらも話を聞く。

「こうやって、赤ちゃん、っていうか子供を大切に見守って、赤ちゃんの成長を楽しみに待ちながら、毎日を過ごすってのは?」

「・・・苦手なのだ・・・・・・・・」

「?子供が?」

ユフィは横に立つヴィンセントを見る。
ユフィの黒い髪も風になびいている。
狭い足場で落ちそうになりながらも、なんとかバランスを保っている。

「子供って…自分の分身のようなものだろう?それが成長するのを見て、過去の自分を思い出しそうで・・・・」


タークスとして、たくさんの人間を殺した。
一人の女を愛し、彼女を他の男に奪われた。
彼女をその男のせいで失い、復讐しようとし、自分も体を改造されてしまった。
彼女を守れなかった、『罪』の中で彼は生きている。
今も、これからも。


「いい迷惑かもしれないけど。」

「??」

「あたし協力するよ。」

「・・・・何にだ?」

いきなり「協力する」なんて言われても困るだろう。

「ヴィンセントが、過去を振り切り、未来を見つめられるように。」

子供を抱き直し、軽くお辞儀をする。
何が楽しいのか、きゃっきゃと笑っているその子。

「あたし、いつも思う。ヴィンセントってすごく損しているなって。」

内心驚いただろうが顔には出さない。
一般人に比べると、感情の変化が少ない。
それも・・・悪夢のような過去からのこと。彼は心を封印したのだ。
その鍵は彼自身が持っている。
封印を解く鍵は。


「この子、これから生きていく。この子はただ、明るいこれからを信じて、歩き出すんだよ。」


この子は今、何を思って生きているのだろうか?

大人へと成長する、可能性に満ち溢れた未来のために、生きている。

「『今』生きている、だから。過去ばっか振り返らないで未来を見ていこう!」

風が吹いた。生暖かい風だ。


「この子の顔を見ていると‥‥生きようって気がする………」

ヴィンセントがボソッともらす。

「この子達のために‥‥あたしたちはいるんだよね。この子達にこの世界を伝えるために‥‥‥」


家への帰宅路。
疲れが溜まっていたのか、スヤスヤといつのまにか眠りにはいってしまっている。

『自由』。その一言が似合う。
しかし、決して自由というわけではない。
子供は親を選べない。
人の人生は親によって決まる。というが。
子供に選択の余地はない。そう思うと、自分がここにいること、自分が仲間といること。
それは・・神が与えた『運命』なのかもしれない。


「こんなんでいいのかな・・・・・」

ユフィの言葉に驚いたのはヴィンセントのほうだ。

「・・・やっぱり人様の子供を勝手に育てるのは・・良くないよね・・・・・・」

「・・・・・最初っから育てる気はないだろう?」

「見抜かれていたか。」と。
がっかりしたような、感心したような表情。

「・・でも、あんたがどう言ったら納得してくれるか・・・悩んだんだよ。」


今を生きて欲しい。
その願いからの出来事。
赤ちゃんを小道具みたいに扱ったのはよくないだろう。
でも、必死だったのだ。


「何をやっても、本当に楽しそうな顔をしていないんだもん。顔は笑っていても目は笑ってない。」

「・・・・・・・悪いな・・・・・」

「だからなんで謝るの!」


「調子狂うな・・・・」とユフィは呆れの溜息。

さっきより長い沈黙。
それはユフィには永遠の時間に思えた。



「・・・ティファに返すってのもなあ〜〜どうしよう。これから。」

「・・・・・考えてなかったのか?」

「うん。」

後先のことをまるっきり考えない。
旅中のメンバーじゃシドに続いての猪突猛進型だろう。

「おまえはなあ・・・・・」

「説教?説教は年寄りの始まりだよ!」



ああ言えばこう言う・・・・・

なんで自分はこんなのと一緒にいるのだろうか・・・

それも神が与えた『運命』か?

そうだとしたら・・・・・・神に感謝しないとな・・・・・






                  *




ザーザーーと砂浜に波の音。濡れた砂が月光でキラキラ光っている。
ウータイから大分離れ、冷えこんできた。

「ここのところ晴れの日が続くな・・・・・」

そんなどうでもいい感想を思わず口にしてしまう。
ユフィがいたら『独り言は年寄りの証拠だよ!』とでも嫌味の一つや二つ言われただろう。
しかし赤子はスヤスヤと何も知らずに眠っている。

彼の黒い髪が小龍の頬をくすぐる。
ユフィから聞いたところによると、この浜辺の少し先へ行ったところに、
よく子供のない夫婦が詣でる祠らしきものがあるらしい。いろいろ謂れはあるようだが、
細かいことはこの際どうでもいい。要は、子供を欲しがっている夫婦が毎日のように
この海岸を通るという事実が、今は重要なのだった。
波に攫われないように、赤子を置く場所を再度確認し、身の回りの物も一緒に置いておいた。


――すまない。だが・・・。早く、いい人たちに拾われるのを、祈っている。


これが最善の策だ、とは言い切れない。しかし、今のヴィンセントには他に考えが浮かばなかった。
立ち上がり、その足元に眠る赤子へと静かに声を掛ける。
「私たちよりいい親を見つけて……幸せにな…」
ユフィにも、ヴィンセントにも、…この子にも…


――幸せを…


思い切るように振り返り、そのまま重い足取りを進める。


――目がおかしくなってしまったのか?


少し戻って、あたりを見渡しても、そこには何もなかった。
赤ん坊を置いたはずの場所が、ただキラキラと光の名残りを弾いているだけ。


――もう、ここには、この世界にはいないのだろうか?


そんな気さえしてしまうほど、超常的な、いや、むしろ神秘的という・・・

ヴィンセントはその赤い目を、ふと、海上に煌めく満ちた月へと向ける。







   ―――幸せに―――








     第四話 END

Copyright (c) 2002 怪盗99号



BGM:「FFVII」より「忍びの末裔」
MIDI提供:モコハウス



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