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〜 【Relational Novel】 〜

【競作リレー】 FFX ・ いにしえの夢

(六日目) ユウナ





by 小沢美月





漂う幻光虫が、その数を減らしはじめてからどれくらいの時が経ったのだろう。
夜が明けたのだ…とぼんやりと思いながら、変わらぬ様子の街を見つめた。
「はぁ…」
聞こえてくるのは、ただ仲間達の溜め息ばかり。
「やっぱり、何も…変わらないね」
溜息混じりにつぶやくリュックの声が、寂しく響く。
日々の探索に、そして漂う不穏な空気に誰もが疲労の色を濃くしていた。
「ああ。昨日となにも変わっちゃいねぇな」
変わらない街の様子が、その疲労をより一層感じさせる。

「…」

ユウナは眠るティーダの顔をのぞきこんだ。
金の長い睫も、聖なる泉でユウナに触れた唇も、今は少しも動かない。
そっと、眠り続けるティーダの腕へと触れる。ちゃんと、温かい。
ほっと息をつくと、ユウナは一人立ち上がった。
「今日は、私が出かけるね」
そばに立てかけてあった杖を手しっかりと握り締める。
ここへ閉じこめられてから、初めての探索。
「あとは私と、ティーダだけ…だよね」
仲間達が出会い、接触した死人達は静かに姿を消したという。それでもこの坑道が開かないのと、ユウナとティーダの両者が死人と接触していないことに関係があるのかもしれない。
「昨日ワッカが言った通り、全員が死人と接触すればなにかが変わるのかもしれないわね」
いつものように腕を組み、ルールーは小さくそうつぶやいた。
他の仲間より疲労していることには変わりないが、一時期よりかなり顔色がよくなったようだ。
「まだ出会っていない死人がいるとか…変えなきゃいけない、何かがあるとか」
ルールーの意見に同意するかのように、リュックが応えキマリも静かに頷いた。
「ね、あたしも一緒に行こうか!?」
慌てて立ち上がろうとするリュックにユウナは優しく微笑みかける。
「みんなは、ゆっくり休んで。私は大丈夫だから」
「そう?」と座りなおすリュックとは逆に、青い獣人はしっかりと背筋を伸ばし立ち上がった。
「ユウナが行くなら、キマリも行く。ユウナは、キマリが守る」
しっかりと、槍を握り締めた彼の表情はいつもと変わらないまま。ユウナは小さく首を横に振ると、キマリをしっかりと見つめた。

「一人でも、大丈夫。今日は、止めないで…」

強い意志が浮かぶ瞳に、キマリはゆっくり頷いた。
「それがユウナの望みなら、キマリは止めない」
「でもよ、ユウナ。一人でほんっとに大丈夫か?やめてもいいんだぞ?」
ユウナを探索に行かせるきっかけをつくった張本人は、なおも止めようとした。
だが、止められたのはワッカの方だった。
「いいえ、むしろ私たちがいた方が邪魔になるわ」
「あああ?どうしてだよ?俺たちゃ「ガード」だろ?」」
邪魔という言葉を聞いて、不満げにワッカは眉を上げた。
ワッカが会った時の死人は危険を感じるようなものではなかったが、危険な執着をもつ死人がいないとは限らない。
ルールーは編んだ漆黒の髪を揺らし、首を振った。
「私たちは一度死人に会ってるもの。警戒して出てこないかもしれない」
「そーいや、もっかい会った時すぐ逃げたって、おっちゃん言ってたよね」
「俺たちに邪魔されると思ってるってワケか」
「確証はもてないけど、可能性はあるわ。でも、十分気をつけるのよ。」
「ユウナ、気をしっかりもて。ユウナはユウナの気持ちさえ忘れなければ、死人をおそれることはない」
ユウナは大きく頷いた。
そしてちらりとティーダの方へ視線を送ると、再びしっかりと仲間達のほうへと向き直る。

「ティーダのこと…お願いします」

ティーダの様子は気にかかるけれど、動かなくてはなにも始まらないかもしれない。なにも、変えられないかもしれない。
それに、他の仲間達を少しでも休ませたい。頼ってばかりは、いられない。
「ユウナ!なにかあったらすぐ呼ぶんだぞ!」
「気を付けて」
心配そうにそう声をかける仲間達。ユウナは笑顔で頷くと、「行ってきます」と彼らに背を向けた。
「無理はするな」
少し離れた場所から仲間達の、そして街の様子をうかがっていたアーロンが通り過ぎようとするユウナへ声をかけた。ただ一言。いつものように、ただ…それだけだけど。ちゃんと感じる優しさ。
「はい!」
ユウナは杖を強く握りしめ、朽ち果てた街へと降りていった。



X X XX XXX XXXX XXXXX XXXX XXX XX X X  




街へと向かいながら、ユウナは一人溜め息をついた。身体が少しだけ重たい。
毎日探索へ出かけている他の仲間ほどではないが、ユウナ自身も疲労を感じていた。
浮遊する幻光虫がもたらす澱んだ空気が、心身ともに不快感を与えている。そんな中に、もう何日もいるのだ。
旅立ちへの目処がつかないことも、少なからずストレスの原因になっている。ここを抜ければ、もうすぐザナルカンドだというのに。
気持ちを保っていられる間に、その場所に辿り着きたかった。それなのに―…
「キミは…」

―いつ目覚めるの?―

その言葉を、飲み込んだ。
いつでもそばにいて、笑いかけてくれたのに。今はただ、その整った寝顔を見つめることしかできない。
寂しくて、不安で。ちゃんと温もりがあることを、常に確かめていたくて。皆が探索に出かけている間、ティーダの腕から手を離せずにいる。
呼びかけても呼びかけても、届かない声。
先日も、ガガゼトの峠で突然倒れた彼。そのときは、すぐに目覚めたのに…。ちゃんと、声も届いていたはずなのに。
あの時よりもずっと、たくさん名前を呼んで、たくさん触れているはずなのに。
「はぁ」
なによりも、彼が…ティーダが目覚めないことがユウナを不安にさせていた。


幻光虫が目の前をちらちらと動き回り、ユウナはふと顔を上げた。
「あ…」
視線を移すと、閉ざされた坑道を見つめたたずむ、見慣れぬ服を着た女性の姿があった。
ふいに、自分の肩に力が入ったのが分かった。握っていた杖をさらにぎゅっと握り締める。
近寄る足が、重たい。無意識のうちに、足音を響かせないような歩き方になる。
カツン
小さな石ころがひとつ、ころころと転がった。一瞬、時間が止まったような気がした。
ぴたりと動きを止めたユウナの表情が固くなる。
やっと誰かが近づいたことに気がついた様子で彼女は振り返り、そして肩を落とした。
茶色の髪が、彼女の顔を覆うように肩からすべりおちた。
「どうか、したんですか?」
思わずそう声をかけると、彼女がぽつりとつぶやいた。
『坑道は、開かない…』
ただ寂しそうに、そして悲しそうに―…




ぼんやりと坑道を見つめ続ける女性の隣で、ユウナは坑道と彼女の表情とへ交互に視線を送っていた。
ここで、生き埋めになったのであろう彼女の気持ちを考えると、なんだか苦しい。
「…」
ふいに彼女のほうを向くと、今まで坑道を見つめていたはずの彼女と視線がぶつかる。
そっと伸ばされた彼女の手が、ひんやりとユウナの頬に触れた。
「!?」
感じる、眩暈。
目の前がぐにゃりと歪む。なんとか地面に杖をつき、倒れそうになる身体を支えた。
砂嵐のようにちらちらとする景色の中に、表情も変えずにこちらを見つめている女性の姿。
熱が、ユウナの頬から彼女の手のひらへと移されていくような不思議な感触。ひんやりと冷たいその手に、なにもかも吸い取られていくような、感覚。
全てを見透かしたような薄茶の瞳で、静かにユウナを見つめる彼女。
『迷って・・・いるのでしょう?』
ぽつりとつぶやかれたその言葉に、ユウナの表情が変化する。
迷って、いる?そんなはずはない。だけど…だけど―…

『ここには以前、たくさんの人が住んでいた。そう、あの日までは―…』
突然ゆっくりと、語り出した彼女の表情がさらに悲しげに見える。

水没した街、レギスタン。あんなに賑やかな街だったのに・・・あんなに楽しい街だったのに・・・。
たった一瞬―…
たった一瞬の出来事が、レギスタンの運命を変えた。
回っていた歯車を、ゆっくりと止めていったのだ。


『ここを掘り続けながら、何度も迷った』
以前ここを掘ったその手のひらを見つめ、彼女はそうつぶやくとうつむき黙り込んだ。

迷いは突然やってきて、なかなか心から離れてはくれない。
それに打ち勝とうとすればするほど、心の奥に住み着いていく。
『あの人は、戻ってはこない。坑道は…開かない』
どれだけ願っても、愛しいあの人の顔をもう一度見ることなどできなかった。
どれだけ想っても、ただ…苦しいだけ。


『あの人と出会わなければ、こんなに苦しまなくてもよかったのに』



      出会わなければ…?

キミと初めて顔をあわせた時の気持ちは、今でも忘れられない。今まで知ることのなかった想い。
初めてキマリに会ったときよりも、ルールーやワッカに会ったときよりも強く感じた想い。
『出会えてよかった』『一緒にいられて、よかった』
なんだか心がほわっと温かくなって、うれしくて。
旅をしていくうちに、気がついた。彼は必要な存在だって。


握られた手のぬくもりがうれしくて、大好きで。本当はもっと一緒にいたくて。触れていたくて…。

そんなこと、今まで感じたこともなかった。これから先も、ないと思ってた。

だけど…
だから、不安になる。苦しくなる。


この旅が終われば、キミとはもうお別れ。触れることもできない。声をかけることもできない。
キミはきっと、忘れてしまう。
こうやって、隣で一緒に歩いたことなんて。


だったら…。だったら知らなければよかった。
キミの手のぬくもりなんて。
知らなければよかった…。唇のやわらかさなんて。
抱きしめられることの、安心感なんて。


あの日、唇を重ねることがなければ…まだがんばれたかもしれない。
まだ、迷わずにいれたかもしれない。



…いっそのこと、キミと出会わなければよかったのに―…
  そうすれば、迷うことなく進めたはずなのに



笑顔とかぬくもりとか、全部全部あの口付けで深く深く植え付けて
迷わせて、惑わせて―・・・
『シン』を倒すことを、一瞬でも頭から消したのはあのときだけ。


ほんの少しでもいい。ほんの一瞬でもいい。
ただ、キミの腕に抱かれていたかった。
ただ、甘い時の流れに身を任せていたかった。


「だけど…だめ」


『シン』を倒すことは、捨てられなかった。このために、がんばってきたのだから。
応援してくれるスピラの人たちの期待に、そしてここまで一緒にがんばってきた仲間達の期待に応えたい。
ここで諦めたら、誰がこのスピラに『ナギ節』をもたらす・・・?
スピラに笑顔をもたらす、という父さんの願いは誰が叶える?

考えようとすればするほど、身体の力が抜けていく。
靄がかかったようにぼんやりとする頭の中で必死に考えを戻そうとするユウナを女性はただじっと見つめたまま。

「『シン』を倒さなくちゃ…」


でも、一緒にいたい。キミと一緒にいたい。
いつか他の誰かがキミの隣を歩くことになるなんて、考えたくない。
隣で笑うのは・・・




『『シン』は、倒してもまた蘇る』
「『シン』のことを何故そんなに知っているの…」
『シン』の存在を知らないまま、この世を去ったはずの彼女が突然そうつぶやいたことで、さらにユウナの表情が強張った。
知らないはず、それなのに。
さっきと同じ、全てを知っているようなその瞳で、彼女は冷たくユウナを見つめ続ける。
まるでひんやりとしたあの手のひらで、ユウナの記憶を読み取っているかのよう。なにもかも、分かっているかのように…。

『あなたが命をかけてスピラを救った後にはまた、『シン』はこの世界に姿を現す』

倒しても倒しても蘇る『シン』
掘っても掘ってもなかなか先の見えないこの坑道と、同じ。
『そうでしょう?』
迷いながら戦い、立ち向かい…そして消えていく。
『あなたが消えた後苦しむのは、彼…そしてほかの仲間達』
あの人が戻ってこないとわかっていたら、ザナルカンドへなんか行かせなかったのに。



霞む視界の中で、女性が少しだけ微笑んだのが見えた。
哀しい、微笑み。
涙を流したわけでもないのに、その悲しみが痛いほど伝わってくる。

『ザナルカンドへ行かなければ…、ここに留まれば、彼とも他の仲間達ともずっと一緒にいられるの』

この、レギスタンで。笑って生きていける。
ザナルカンドへなど行かなければ、幸せに生きていける。


浅く、弱く呼吸をしながらユウナはそっと女性を見上げた。
「でも、『シン』を倒すことができるかもしれない」
儚い、願い。
そんな根拠などどこにもない。
だけど、願わずにはいられない。願えば叶うかもしれない。
「今度こそ、復活しないかもしれない」

すでに立っていることさえできず座り込んだまま、ユウナはいつものような力強さの感じられない瞳で女性を睨みつけた。
そうしないと、心を保てない気がした。
復活しないかもしれない。そう思わないと、先へ進めない。そう言い聞かせないと、迷ってしまいそうな気がして…。

『でも、消せないかもしれない』
冷たい口調でそう返す彼女。
ユウナの視線など、まるで気にならないかのように淡々とつぶやいた。
『私が、この坑道を開けることができなかったように…再び、あの人の顔を見ることがなかったように…』

がんばって掘り続けても、坑道は開くことのないまま、すべての命は水の中へと飲まれていった。
会いたかった、一緒にいたかった人には会えないまま。
どれだけ願ったか、どれだけ思ったか…
それなのに―

がんばっても、願っても、叶わないことのほうが多いのだ。
そうつぶやき、彼女は再び視線を坑道のほうへと戻した。


薄れ行く意識の中。ぼんやりと、だけど唯一思い出すのはあの人のこと。
やさしい笑顔。あたたかな腕。

キミといたい…。一緒にいたい。
キミのザナルカンドへ一緒に行こうって、そう言ってくれた時、本当は全てを捨てて頷きたかった。
キミとなら、どこまでも行けそうな気がした。幸せに、なれそうな気がした。

だけどー


幸せなことばかりじゃない…。
キミといることで、キミを想うことで、こんなに苦しまなくてはいけないのなら
迷わなくてはいけないのなら


出逢わなければ、よかったのに―…



キミと出逢わなければ、今とはきっと何もかも違う。
ルカでビサイド・オーラカが目立つこともなかっただろう。
指笛だって、吹こうともしなかっただろう。
キミがいたから出会えた人達がいたように、キミがいなければ出会えた人達だっていたはずだ。
幻光河で、寂しさを感じることもなければ、シーモア老師との結婚も迷うことなく決断していた。
寺院に背くこともなく、追われることもなく。
エボンの真実など何も知らないまま…。『シン』の正体も、分からないまま。


今とはまるで、別の人生。

「…」
人を好きになる喜びも、うれしさも、悲しさも、苦しさも
何も知らないまま―…
ただ決められた道を召喚士としての正しい道を、歩いていくだけ。
キミの笑顔に救われることもなく、一緒に笑い合うこともなく


そんな道を歩いたとして、はたしてここまで来れただろうか―

苦しさに押しつぶされそうでも、一人耐えることができるだろうか

作り物の笑顔を浮かべ、悲しいことを考えないように精一杯前を向いて進んでいく。
いずれは別れなければならない仲間達との思い出を噛締めながら。
召喚士としての仕事を立派に終えた後のことは、できるだけ考えないようにしてきたのに…。
キミと出会って初めて、少しだけ考えた。このままこの世界に留まること。
だけど、それは違うって。ちゃんと『シン』を倒して、スピラに笑顔をもたらすことが、夢。
叶えたかった、夢。
迷って苦しんで、だけどちゃんとそれを分からせてくれたのは、キミだった。


「あ…」

そうだ
キミがいたからこそ、ここまでがんばれた。
キミがいたから、つらいときでも笑っていられた。
キミがいたから、素直に涙することもできた。


「キミがいたから…ここまで来れた」


苦しい時、辛い時。いつだってそばにいてくれたキミ。
スピラの常識に囚われない言動に、気づかされたことも多かった。
キミがいたからこそ、リュックやアーロンさんに出会えた、今がある。
迷ったからこそ、苦しんだからこそ、残りわずかな時間を大切に生きようと思える。
意志を曲げず、歩いて行きたいってそう思える。
寺院に背こうと、追われようと。
これが私の『物語』なのだから。

迷って、戸惑って…受け止めて、受け入れて―…

―ティーダがいたからこそ、今の自分があるのだ―


再びしっかりと顔を上げ、ユウナは女性を見上げた。
意志の強さを、ちゃんと伝えられる強い視線を少しだけ取り戻した瞳で…

「あなたも、そうだったのではないですか?」

一瞬だけ、女性の表情が変わった。はっとしたように見開いた目を、彼女は慌てて瞬いた。

あの人に会いたくて。あの人が戻ってきてくれると信じて、坑道を掘りつづけた日々。
諦めなかったのは、あの人がいたから。
最後まで生き抜こうとしたのは、あの人がいたから。

「迷ったかもしれない、不安で泣いた日も、あったかもしれない」
だけど

楽しかったことも、幸せだっていう気持ちも全部、彼がいたからこそ得られたもの。
彼と出逢ったからこそ、感じたこと。

―それだけは、本物―

「今のあなたがいるのは、愛したあの人がいたから」

苦しさや悲しさ、うれしさや、愛しさ。
そのすべてがあったからこそ、今ここにこうしている。
存在している―…


ユウナは杖に手をかけ、ふらつく足で立ちあがった。
苦しさを見せない、いつもの表情。
「私も…ティーダと、そして仲間達と出会って感じたこと全部受け止めて『シン』に立ち向かいます」

少しでも希望があるのなら

「かつての、あなたのように」
諦めない。

少しでも、可能性があるのなら―…

一瞬、ぐらりと女性の姿が歪んだような気がした。幻光がユウナと彼女の周りを激しく飛び回る。
少しだけ、前よりも姿の薄らいだように見える彼女は小さく溜め息をついた。
「…」
そして突然くるりと向きを変え、女性はユウナに背を向けるとそのまま歩き始めた。
ただ、静かに
そしてふと立ち止まり、振り返る。

『あなたは…私に似ているわ』

相変わらず寂しげな表情でそうつぶやくと、再び背を向け、街の奥へと消えていった。

残されたユウナはただ一人、荒い息を整えると溜め息ひとつ。
汚れた着物の裾を払うと、しっかりと前を向いて立ち上がる。
「戻らなくっちゃ」
仲間達の、待つ場所。愛しいあの人が、眠り続けるあの場所へ…



X X XX XXX XXXX XXXXX XXXX XXX XX X X  




「あ!!!ユウナ〜ん!!」
変わらぬ様子の街から歩いてくるユウナを真っ先に見つけたのは、リュックだった。
表には出さぬようにしているのだろうが、出かけていった時よりもやはり疲労しているようにリュックには見えた。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
心配する仲間達へそう微笑みかける。

もう、大丈夫。迷ったりは、しない。
全てを受け入れて、先に進む。そう、決めたのだから。


「会ったのか?」


低い声がユウナの頭上から聞こえた。
いつの間にか、ユウナの後ろにアーロンが立っていた。
「はい。女の人、でした」
「……そうか」
「似てるって……言われました」
アーロンはかすかに目を細めると、顎でティーダの元へ行くよう促した。
丁寧にアーロンへ会釈してから、ユウナはティーダの方へ向かった。

体も心も疲れているはずだが、不思議とユウナの足は軽やかだった。

「ティーダの…様子は?」
目を瞑ったままのティーダの横へ、そっと座る。
「相変わらずだ」と首を振るワッカに、「そっか」と寂しく笑った。

キミがいるから、がんばれる。がんばらなくっちゃと、思える。
それがどれだけ大切なことか、ちゃんと分かった。だから

「負けないよ」

「ん?なんか言ったか?」
小さくつぶやいたその声に、ワッカが振り返ったが「なんでもないよ」と笑って見せた。
ユウナは台の上に身体を預け、ティーダの顔を見つめた。
自然とユウナの顔に笑みがうかぶ。
「今度はキミの番だよ。戻ってきてくれるよね…きっと」

ユウナは金の髪を、そっと指でなでつけた。



思いの全てを指にこめて。







くりかえし、くりかえし……。







「……あれ?」
いつの間にか、安らかな寝息が聞こえていた。
リュックはそっとユウナの顔をのぞき込んだ。
「寝ちゃったみたい」
「疲れてるのよ、そっとしといてあげましょう」
「そだね。ほら、ワッカ!人の恋路邪魔するとチョコボに蹴られるよ!」
「お、おう。」
ガードたちは少し離れた場所に移動した。
召喚士の幸せな時間を奪わぬように。

「後はアイツだけか」
「でもさあ、まず目ぇ覚ましてくれないと、死人に会うどころじゃないよねぇ」
「だよなあ……」



ガードたちがため息をついた、そのとき。



ティーダの指がかすかに動いた。



誰も気づいた者はいなかった。



隣で眠る、ユウナでさえも。




















私、負けないよ。

















ティーダ……キミがいてくれる限り―…





















壁紙&イラスト:安茂



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