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Happy Merry Christmas !
written by テオ
「ハウルーっ、ケーキ焼けたからテーブルの準備の方、お願い〜」 階下から、朝早くから張り切って動き回っていたソフィーの明るい声がする。 今年のクリスマスの料理は私に任せてね、とソフィーに言い渡されてダイニングから追い出されていたハウルはやっと自分の出番が来たことで、自然に返事も弾んでくる。 「わかったっ」 足取りも軽く階段を下りていくと、マルクルがパタパタとツリーの飾りを持って走り回っていた。 見ると、ヒンと婆さん(荒地の魔女)はちゃっかりとソファに座り込み、既に待機万全のようだ。 ハウルはぐるりとダイニングを見回した。 暖炉の脇ではソフィーがケーキの仕上げに忙しそうで、その横にあるツリーはマルクルが運んできたらしい飾り玉が綺麗に飾りつけられている。 ソフィーが来てからというもの、以前は台所ともダイニングとも言えないほど散らかっていたこの場所が、いつも整然として居心地良く、文字通り皆の憩いの場となっている。 「さてと。じゃあ僕は…」 スッと彼が指を一振りすると、片付けられてはいるが質素だった部屋の様子が一変した。 壁には星空を思わせる光る壁紙が、床には滑らかなビロードが敷かれ、テーブルの上には艶やかなクロスが掛けられて。 ふと振り返ったソフィーが、まだエプロンを付けたまま驚きの声を上げる。 「まあ、ハウル! ステキ!」 赤いテーブルクロスの上に並べられた、ソフィーの手料理を待っている真新しい食器たちも、彼女を喜ばせるのに一役買っていた。 こんな時、ハウルは思う。 どんな褒め言葉や賞賛を受けようと、大切な人の嬉しそうな笑顔に敵うものなどない、と。 「じゃあ、準備もできたことだし、ディナーを始めましょう。ハウル、マルクル、料理を運んでちょうだい」 自らは出来上がったばかりのケーキをテーブルの上に置きながら、男どもに遠慮会釈なく指示を出す彼女は、今ではすっかりこの城の主よりも発言権を持っている。けれど次々と並べられていく、決して豪華ではないがソフィーの心のこもった美味しそうな料理たちを見て、誰一人として不満と思うはずもない。 程よく冷まされたスープを、皿に顔を突っ込んで一心に舐めているヒンの周りは食べこぼしでベチャベチャだ。かと思うと、マルクルだって負けていない。口の中いっぱいに料理を頬張り、頬も顎もクリームだらけ。そんな様子をわかっているのか、美味しそうにワインを飲んでいる元荒地の魔女婆さんも。賑やかに、和気藹々とクリスマスディナーを皆が楽しんでいると……。 「ソフィ〜、オイラを忘れないでくれよ〜」 暖炉の方から、唐突に不平の声がかかった。 「あらっ、いけないっ! 私ったら、カルシファーのことすっかり忘れていたわ」 とたんにショボリと火勢が小さくなるカルシファー。 「ひどいよ…ソフィー…」 クススと笑うソフィーはカルシファーのいる暖炉に近づきながら、それでもちっとも申し訳なさそうな態度ではない。それどこか、悪戯っぽく微笑んでいて……。 「はい! カルシファー、これはあなただけのケーキよ」 今日一番の功労者ですものね、と言って差し出されたのは、可愛いらしくデコレーションされた小さな小さなケーキ。しかもこの動く城を模していて、台座に足までついている。 「えっ……! こっこっこれっ! オイラの?!」 自分専用だというケーキを目の前にして、カルシファーはびっくり仰天! 一気に火の勢いも増すというもの。 「良かったね、カルシファー」 ハウルに暖炉から取った小枝に移してもらい、その専用ケーキにまるでろうそくのように刺されたカルシファーは、ちょっとどころかかなり嬉しそう。 「じゃ、じゃあさ、オイラもこんなことしちゃおうかなー」 自分が乗ったケーキを本物の動く城さながら、魔法を掛けてテーブルの上を歩き出させる。 「まあ、可愛い。すごいわ、カルシファー」 「へへっ、こ、こんなこと、どうってことないさっ」 ソフィーに褒められて、自慢げに動くケーキに乗ってテーブルを歩きまわっていたカルシファーは、ふと気づいた。 ヒンとマルクルの目が自分を、いや、動くケーキを凝視していることに。 「あっ! おいっ! こっこれは、オイラのだからなっ! ソフィーがオイラのためだけに作ってくれたんだからなっ!」 と、二人の視線から逃れるようにテーブルの上をちょこちょこと駆けていく。その恰好があまりにも面白くて、皆の笑い声が部屋いっぱいに溢れていった。 ステキな楽しいクリスマス。 Merry Merry Christmas ★ Happy Happy Christmas ♪ ミ☆ おしまい ☆彡 <おまけ> 「ところで、あんたはどうしてココにいるんです?」 「…………」 「王子ともなれば、今夜は自分の国の城で盛大なパーティでもやってるでしょう?」 「…………いっいいじゃないか……私だってソフィー……さんと一緒にクリスマスを過ごしたかったんだ…」 (王子よ……ケナゲだ……(笑)) |