■■ SCENE 1 ■■
−−−・・・お。 −−−どうしたんだワッカ?こんな所をウロウロと・・・。
何だ、お前か。 んだよ、ジロジロ見やがって、そんなにオレがめずらしーのかよ。 あーぜってー無理無理、頼むから今のオレに落ち着けだとか何とかつまんねー事言うんじゃねーぞ!?
−−−わかった。よくわかったが・・・お前の様子はいささか度が過ぎているな。
・・・・・・はぁ。 ユウナにはオレが産むわけじゃねぇんだから、なんて言われちまってるしよお・・・。 でもなぁ、出産ってやっぱ半端じゃなく大変なんだろ?
−−−男にこの痛みは耐えられない、ショックで即座に異界行きだと言われているぞ?
・・・・・・。 ダメだ。・・・・・・想像しただけで気が遠くなっちまう。 でも・・・でもよー、こんな思いするくれーならオレが産んだ方がまだマシだって! ・・・笑うな。オレの目を見てみろ・・・本気だぞ?
あァ?そんなに言うなら立ち会ってやればよかっただろ、だと? ンなこたぁ、とっくに何週間も前にルーに聞いてみたって。 したらよ、とりつく島もないってなカンジで断られちまってさぁ。 腕のいい取り上げばーさんがいるから何も心配すんな、だとさ。 大方、オレが途中で逃げ出すとでも思ったんだろ。
ルー・・・ 大丈夫かな・・・・・・・・・・・・・・・。
−−−そのルールーが心配ないと請け合ったんだろう?お前が信用しないでどうするんだ。
んな余裕かませねぇって!ウソだと思うんならお前もとっとと子供こさえてみろ! このなぁ〜、自分はスピラ一無力な存在なんじゃねーかっつぅ気持ちが思う存分味わえるぜぇ?
■■ SCENE 2 ■■
−−−お前ともあろう男が、ずいぶんと弱気だな。もっと前向きに・・・そう、 −−−父親の希望としては男と女、どっちがいいんだ?
・・・・・・もしかしてよぉ〜、お前も一枚かんでるのか?
−−−・・・・・・な、何の話だ?
とぼけるな。 お前らキッチリ隠し通しているつもりなんだろうが、オレの目は節穴じゃねぇんだ。 胴元はどうせオーラカの奴らだろ? 全く、よってたかってオレたちの子供を賭のネタなんぞにしやがって・・・ 返事に妙な間があった所を見ると、さてはお前も張り込んだクチだな。
−−−はは、そう言うな。伝説のガード同士の二世誕生ともなれば、周りが騒ぐのも当たり前だろう?
ったくよぉ・・・後でルーにバレてみろ、知らねぇぞ? その男だか女だかって話だけどな、母子共に無事ならどっちだっていいに決まってるだろ。 ・・・まぁ勝手がわかるっつー点では男かもしれねーけどよ。 ブリッツの練習でも、遠慮なく揉んでやれるしな。
−−−お前のことだ。歩き出すより前に、水に放り込むんじゃないのか?
あったりめーよ!どんな玩具より先にボールに触らせてやるさ。
−−−じゃあ娘ならどうだ?俺にはお前の親馬鹿ぶりが目に見えるようだが。
女の子かぁ・・・本当の事言っちまうと、そっちの場合は想像もつかねぇよ。 でも親バカならともかく、バカ親って言われるのだけは勘弁だよなぁ。 なあ、どっちだと思う?
−−−俺に聞いてどうする。尤もこの話題は、男二人で議論しても不毛だな・・・
ああそりゃ、男かな女かなとか、俺とルーどっちに似てるんだろうとか、色々と考えてた時期も確かにあった。 でもルーが産気づいたって聞いた途端、ンなモンはみーんなどっか行っちまったって。 とにかく今は何事もなく、無事に生まれてきて欲しい。ただそんだけだ。
でも・・・・・・。 でもなぁ・・・・・・。
■■ SCENE 3 ■■
−−−急に口数が減ったな。またつまらない事でくよくよと悩んでいるのか?
ぬかせ。 ・・・・・・いや・・・な、正直言っちまうと、この期に及んでも不安でしょーがねーっつーか・・・。
知ってんだろ?オレの親は、オレが物心つく前に死んじまった。 だから自慢じゃねぇが、オレは親ってのがどんなもんなのか、何も知らねぇ。 そんなオレが親なんつー大それたモンになっちまっていいのかよ? 何せ人間一人育て上げるっつー、一生をかけた大仕事なんだぞ?
−−−そうか・・・。だがな、俺は思うぞ。 −−−何と言っても、未だに新婚気分が抜けんお前とルールーだ。
へへへへ。そっかぁ〜〜?
−−−お前のそんなゆるみきった顔なんざ見たくもない、さっさとしまえ! −−−・・・いいから黙って聞いていろ。冷やかすのも馬鹿馬鹿しくなってくるぞ。 −−−何もかもが正反対な性格のお前たちなのにな。正直不思議でならないんだが・・・。
−−−そんな幸せにどっぷり首まで浸かっている夫婦が親なら、不幸になるなんて事だけはあり得んさ。 −−−ああこの際だから言ってやる。・・・お前とルールーなら心配は無用だ。
お前・・・オレとしたことが今まで気づかなかったけどよ・・・実はすっげーいいヤツだったんだなー! ・・・つーかもう朝か?何だか薄明るくなってきちまったぞ。
−−−そうだな。人は夜明けに生まれることが多いというが・・・経過はどうなんだろう。 −−−・・・っと!
(布地の擦れる音)
おい、何入れてるんだそこ? あ?・・・・・・あーーーーーーッ!!
−−−!!
何だよこのスフィア! さてはてめぇ・・・もしや今までの話・・・全部録ってやがったのか? この野郎!何考えてんだか知らねぇが今日という今日は一発殴ってやる!!
−−−ま、待て落ち着け!!・・・・・・!! ち、違う、おい聞け!
へッ? ・・・・・・あ・・・!!
ま、まさか・・・・・・・・・・・・。
−−−何が「まさか」だ。・・・それにしても元気な声だな。おめでとう、ワッカ。
赤ん坊・・・??
オレの・・・?
は・・・・・・。はははは・・・・・・ そっか・・・・・・産まれたか・・・・・・・・・ルー・・・・・・
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
どけ!!
(激しい衝撃音)
■■ SCENE 4 ■■
・・・よかった。壊れてないみたいだな。
ルールー、おめでとう。 まだ君にも赤ちゃんにも会っていないけど、元気な産声はしっかりと聞いたよ。 たまたま思いついてね。君が産気づいてからのワッカの様子を、スフィアで隠し録りさせてもらった。 お陰で奴には殴り倒されそうになったけど、ずっと君たちのことを気にかけている姿には正直、胸が熱くなってね。 これは思いの外、いい贈り物になるんじゃないかと自負している。 そうそう、ルッツおじさんがよろしく言っていたって、新しい家族に伝えておいてほしい。 頼んだよ。 本当にお疲れさま。じゃあ、ゆっくり休んでくれ。
ああ、あいつなら今そのへんを走り回っている。 やれやれ、まだ朝も早いのに、村中の人を叩き起こしかねない勢いだ。 ところで、君の大事なご亭主は何て叫んでいると思う?
みんな聞いとけ!
このオレが!
たった今!
オヤジになったぜーーーー!!
(昇る朝日を背に受けて 完)
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