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カーンカーン ゴーッ ガシャン トントントン 忙しないけれど心地よい音が響き渡っている。 ここはミッドガルにほど近い浜辺に位置する街。 街の名前はルーン。 ミッドガルに住んでいる人々が移り住むために建造中の新しい街である。 メテオとホーリーがぶつかりあった、運命のあの日。 世界中から溢れてきたライフストリームがホーリーに合流して、ついにメテオを退けた。 セフィロスの破滅への誘いに、エアリスの救いの願いが勝った瞬間。 星の生命をも賭けた闘い。 そして、その日からミットガルの魔晄炉が役に立たなくなった。 魔晄の流れが変わってしまったのか、一切の魔晄を吸い上げることが出来なくなったのだった。 ミッドガルを支えていた魔晄エネルギー。 魔晄を掘り尽くすまで止まるはずのなかった魔晄炉が、今では無用の長物と成り果てている。 原因はいろいろと取り沙汰されているが、正確なところは未だ解明されてはいない。 あの日のライフストリームの出現自体が人知を超える現象だったのだから、浅はかな人間の考えの及ぶところではないのだろう。 だが、そのことがこの星を救ったという事実こその方が遥かに大きな意味を持っていた。 結果、エアリスはセフィロスと人の両方からこの星を救ったということを知っているのは、このことに関わったごく僅かな人々だけであった。 魔晄エネルギーに支えられていたミッドガルはもはや都市として、その機能を果たすことは出来ない。 特にウェポンの襲来によってかなりの痛手を受けた神羅ビルを始め、魔晄にすべてを頼っていた上層階の都市部は悲惨な状態だった。 むしろ、魔晄の恩恵をほとんど受けていなかった地下層のスラムの方がまだマシだった。 それでもやはり、まったく魔晄を使えないとなると交通手段を始めとして人々が安易に生活できる場所ではなくなっている。 ミッドガルを全面的に仕切っていた神羅も今ではほとんど壊滅状態で、神羅の良心ともいうべきリーブが必死で生き残った人々を救うべく八面六臂の働きをしていた。 そこで苦肉の策として取り上げられたのが、ミッドガルの住民大移動である。 リーブは残った神羅の財力権力を駆使して、住民を受け入れることのできる場所を探した。 しかし、これほどの大移動となると受け入れることのできる街はおいそれとは見つかるはずもない。 むしろ移動の楽な近隣に、ミッドガルから使用可能な機械や物資と共に人々を移住させることのできる街を一から建設した方が早期解決だと最終的にリーブは決断した。 ミッドガルはバレットを始めとしてクラウドやティファにとっても第二の故郷というべき場所である。 魔晄の存在しなくなったミッドガルの惨状を目の当たりにしていた彼らも、もちろんこの考えに賛同し、かつての仲間に協力を申し出たのだった。 「おい、クラウド。まだこんな所でウロウロしてたのか?」 今日の自分の予定を終えたらしいバレットが、浜辺で輸送部隊の指揮をしていたクラウドに近づいてきた。 「あ、ああ。バレットか…ちょっと待っててくれ。 カームとコスモキャニオンからの物資は第三ブロックへ運んでくれ。 第六ブロック予定の、ゴンガガからは、まあ、無理だろうな。 第一のジュノンから到着している予備の分を回せばいい」 副官に残りの指示を出してから、クラウドはかなり情けない表情を声の方に向けた。 「だけど、今日到着予定のウータイからの輸送船がまだ……」 途端に、バレットは自分の首にかけたタオルを強く掴みながら怒鳴った。 「こんな時にそんな悠長なこと言ってる場合じゃねーだろう!」 怒るバレットに尚一層、困ったように眉根を寄せるクラウド。 「そ、それはそうなんだが」 「あー、わかったわかった。ここは俺が引き継いでやるから、おまえはティファの所へ行ってやれ」 そう言われてクラウドは、あからさまに嬉々とした表情になる。 「ありがとう、バレット。後は頼む!」 礼の言葉もそこそこに、脱兎のごとくクラウドは駆け出していった。 後に残されたバレットは呆れながら大きなため息をついて笑った。 「ったくよぉ。今日一日、気が気じゃなかっただろうによ。変なとこで責任感強ぇんだよ、あいつは」 仲間の暖かい眼差しに見送られ、クラウドはミッドガルへと急いでいた。 『ティファ、ティファ。大丈夫だろうか。なんとか俺が行くまで頑張ってくれ』 輸送車を駆りミッドガルへ着くまでの間、クラウドはずっと彼を待っているはずのティファのことを案じていた。 ティファは現在、ミッドガルの病院にいる。 まだまだ建設中のルーンでは、満足な設備の病院はない。 それゆえ、魔晄の使えない最低限ではあるが、多少は機能している設備のある病院に入院するしかなかったのだ。 ルーンとミッドガルは近いとはいえ、物資輸送用の車の速度は決して早いとは言えない。 それでも人の足とは比べようもないのだが、気が急いている今のクラウドにはまるで亀の足のように遅く感じてしかたがなかった。 飛空艇があればいいのだろうが、今はシドと共に建設用物資搬送の主力として世界中を飛び回っていた。 「くそっ。もっと早く走れないのか。このボロ車!」 不当な言葉を浴びせられながら、輸送車は一途ミッドガルへとひた走る。 Copyright (c) 2002 テオ
■あとがき■ |